ABEJA PLATFORM

「人工知能の眼」による検品自動化
〜生産現場で価値を生むAIシステム〜

武蔵精密工業株式会社 様

会社名
武蔵精密工業株式会社

導入背景

仕事量の10~15%を割いていた
検品作業にABEJA Platform を活用

自動車産業では、我々パーツメーカーの技術力が完成車の質を大きく左右します。当社は自動車のギヤやエンジン部品をつくっているのですが、――その堅牢性は自動車の耐久性に、また、小型・軽量化は燃費の向上に直結するのです。そんななか当社は、熱した鉄を打つ「鍛造」、鍛造した鉄を部品の形に切り出す「切削」、表面を堅くする「熱処理」等の一貫生産体制を築くなど、積極的に技術力を向上させ、独創的な部品を作りだしてきました。

このチャレンジングな企業姿勢は、当然、いまも変わっていません。だから、社長の大塚浩史が知人を介してABEJAの岡田陽介社長と知り合うと、すぐ「AIを使った技術革新を進めよう!」と考えたのは必然だったと思います。

ただしこの時点で我々は「AIで何ができるか」という知見を持っていませんでした。そこで、まずは社員を3人選抜してABEJAさんが提供する「ディープラーニングトレーニングコース」を受けることにしました。そして、ディープラーニングに関する技術的な知見を得た上で、社内で議論を繰り返したのです。AIは自動運転等、さまざまな可能性を持っていましたが、なかでも我々は「検品から始めよう」と結論づけました。当社は一般的な産業用カメラシステムを用いての検品に10年以上取り組んでいたため、旧来のカメラを使って検品できないか10年以上模索していたため「検品なら実現への具体的な道筋が見える」と考えたのです。同時に、検品は目視検査で行っており、当社の仕事量の10~15%が検品に割かれていました。このため「開発コストに見合う成果が出せる」と考えたのです。

 

実証実験の段階で、
不良品の97.7%を「NG」と判断

なかでも、我々が目をつけたのは「ベベルギヤ」。自動車が曲がるとき左右の車輪の回転数を調整するギヤで、表面が粗いため検品を担当する人間に習熟が必要な部品でもあります。検品の仕組みは、まず「AIに良品の画像を多数読みこませて学習させる」、次に「検品対象を撮影し、良品と差があったら不良の可能性があると判断する」もの。人間が作業をする手にあたる制御システムは当社がつくり、考える脳にあたるAIにおけるデータの取得・蓄積・学習・デプロイを実行する部分は「ABEJA Platform」を利用して創り上げようと考えました。

実証実験の開始は2017年7月。最初に、当社が製造装置の内製化で培った技術力を活かし、データ取得のための設備をつくりました。具体的には、カメラと機械を組み合わせ、ギアギヤを様々な角度から自動で撮影する装置です。完成後には、AIの学習用に8万6000枚におよぶベベルギヤの画像データを取得しました。

しかし、問題もありました。ベベルギヤの不良率はわずか0.002%、現実的には不良品データがほぼ存在しない状況でAIに学習させる必要があります。そんななかABEJAさんは「AutoEncoder」(オートエンコーダ:自己符号化器)など複数の手法を組み合わせ、良品データのみから不良品を判断する方法を確立し「ABEJA Platform」に実装してくれました。

具体的には、まずAIに良品のデータを大量に学習させます。そして良品の画像、不良品の画像、どちらが入ってきても画像から良品の画像をつくろうと試みるのです。このとき、AIが認識している良品の画像と入力された画像の差が大きく、復元できない特長があった場合、製品欠陥があるとみなします。

同時に我々は「ABEJA Platform」のアノテーション機能を利用し、不具合事象の分類もできるようにしました。不良品が見つかったら「不良ポイント(画像の中の打痕など)はここだ」とマーキングし、それが我々の業界で言う「打痕」なのか「しわ」「歯面キズ」なのか「打痕」なのかラベルをつけられる機能です。これによりAIは、将来より正確に不良品の判定が可能になります。

そして2017年11月、我々は良品と不良品をAIに判定させる試験を開始しました。ここまでの動きを言葉にすれば、一見、簡単そうです。しかし実際は、教科書もなく前例もないチャレンジングな作業だったため、我々は非常に長い道のりだと感じていました。しかし、AIを動かすと――この段階で不良品の97.7%をしっかり「NG」と判断してくれたのです。我々は「現場実装の可能性を感じる大きな成果だ」と感じ、プロトタイプ検査機の製作・実装を決断しました。具体的には、ロボット搬送装置でギヤを運んで複数台のカメラで撮影し、AIが「これはNG品」と判断したら制御信号を発して搬送装置を制御する検査機の製作にとりかかったのです。

そして現在、我々は実証実験で構築した学習済みモデルの調整を引き続き行ってさらに精度を高め、同時に「ABEJA Platform」が持つ、モデルの再学習や更新と監視機能を活用して、2018年度には更に適用を拡大して運用していく予定でいます。

活用後の感想

AIの導入に不可欠なのは
「互いを理解し、チームになること」

 

我々は「当社のスタッフとABEJAさんが“チーム化”していけたからこそ研究が進んだ」という感想を持っています。現場では「理屈ではうまくいくはず、しかし実際に装置を動かすと思わぬ結果が出る」といったことがたびたびありました。これを解決するためには、当社の機械的なシステムが原因なのか、もしくはAI側に原因があるのか、問題を切り分けなければなりません。
そんななかムサシでは、システムに適したGPUの選定など(結果的にNVIDIAの「Jetson TX2」を選定)ABEJAさんにアドバイスをいただきながら、ムサシの方でも、ロボットとAIの間の通信速度の調整を含めた、まさに「AIとロボットのすりあわせ」技術をブラッシュアップしていきました。そんななか現場では、ABEJAさんに事細かなアドバイスももらっていました。具体的には、システムに適したGPUの選定(結果的にNVIDIAの「Jetson TX2」を選定)や、ロボットとAIの間の通信速度などです。同時にABEJAさんも、オートエンコーダを使った判定モデルの精度を向上させるなど、我々が現場で直面した課題を解決し「ABEJA Platform」の性能を向上させていました。簡単に言えば、AIの導入は「所定の結果を出して下さい」といった外注ではなく「武蔵精密の機械はこんなスピードで動く」「なら、ABEJAのAIは~」と互いを理解していくことで大きな成果が出せるものだった、と感じています。

ムサシのベベルギヤは、不良率自体が非常に低く、長時間集中して目視を行なう高負荷作業ベベルギヤの検品は、1日に1個もない不良を探す、長時間の集中が必要な高負荷作業ですした。また、様々な部品のなかでも、最も検品が難しい製品でした。これをAIに任せることができれば、人的リソースを別の仕事に向けられるなど、経営に与えるインパクトは非常に大きいはず。しかもベベルギヤの検品が自動化できたら、当然、ほかの部品もAIで検品できるようになっていくはずです。

現在、自動車産業は、100年に一度の革命期を迎えており、我々パーツメーカーも、常にAIなど新しいテクノロジーを取り入れ、現場に実装していく必要性を実感しています。当社のABEJAさんとの取り組みが、将来どんな世界をつくるか、私も楽しみです。