【インタビュー】カルチャー発信基地パルコが描く、これからの時代の消費文化とは?

WRITER : Editorial department

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アメリカで始まった「Kickstarter」や「Indiegogo」を中心に、いまクラウドファンディングサービスが盛り上がりを見せている。日本でも「Readyfor」や「Campfire」など、数多くのサービスが展開されている。

Massolution社のレポート「2015CF Crowdfunding Industry Report」 によると、クラウドファンディングによる2014年の総調達額は、約2兆円(1$=120円)に達している。

そのような中、2014年12月に株式会社パルコ(以下、パルコ)は、ショッピングセンター事業者としては初となる、クラウドファンディングサービス「BOOSTER」を立ち上げた。

なぜ小売企業であるパルコが、クラウドファンディングのサービスを始めたのであろうか?

今回は、パルコのクラウドファンディングサービス「BOOSTER」の立ち上げメンバーである伊藤健氏(以下、伊藤氏)に、サービス立ち上げの経緯や、パルコならではのクラウドファンディングサービスの特徴、サービスに込めた想いなどをお伺いしながら、サービスや小売業の未来像について、お話しをいただいた。

▼参照

2015CF Crowdfunding Industry Report

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単なる投資ではない、コミュニティリターンとしてのクラウドファンディング

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もともとパルコは、FIGHT FASHION FUND(以下、FFF)という投資型のクラウドファンディングを2011年10月から2014年4月まで行っていた。このサービスは投資型なので、一口3万円から資金調達を募り、売上高実績に応じて出資者にお金をリターンする仕組みを採用していた。

FFFでは、2名のデザイナーのブランドをサポートし、1つのブランドは実際にパルコのテナントに出店し、もう1つは代官山で路面店を開くほどに拡大したのだという。

「生活者参加型でモノをつくり上げることが面白いんです。ファンドはお金がお金になるだけのものだが、FFFではコミュニティリターンという考え方ができます。」

伊藤氏が語るように、FFFでは出資者がただ金銭的な投資をするだけではなく、デザインやブランドの企画にも関わる機会をつくるなど、生活者参加型でモノをつくり上げる「コミュニティリターン」というコンセプトが掲げられていた。

BOOSTERはこのようなFFFのコンセプトを引き継ぎながら、利用者の間口を広げる形で2014年の12月にスタートした。投資型から購買型にすることで、よりカジュアルにユーザーがサポーターとして参加しやすくなったのだという。

またFFFはもともと、「ニッポン ファ・ファ・ファ!」というキャッチフレーズのもと、日本のデザイナーを支援するというミッションを持っていたが、BOOSTERでは、日本に限らず海外のデザイナー、またファッション以外にも音楽やアート・映画など、様々なジャンルに対象を拡大している。さらにファッションの中でも、「ファッション✕テクノロジー」を意識したものを増やしていきたいという。

パルコならではの環境が生み出す、ユニークなプロジェクト

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引用:BOOSTER

BOOSTERでは、2015年5月末の時点で、すでにプロジェクトが10個立ち上がり、募集期間が終了したプロジェクト9個(※7月8日現在)すべてを成功させている。

その高い成功率の裏には、パルコならではの秘訣が存在しているのだ。

BOOSTERはオープンエントリーとなっているが、その他にも、全国に存在するパルコのオンサイトスタッフが、各地で様々な活動をしている面白いキーパーソンとつながっており、そのスタッフからの推薦を通じても、プロジェクトの候補が生まれている。

「パルコはもともと不動産業が主であったので、日本各地の面白いデザイナーさんや才能を持った人との接点を、パルコのテナントに出店してもらうという不動産を介した形でしか持てませんでした。しかしBOOSTERというサービスを通じて、彼らの才能を直接世の中に発信するために、パルコとしていろいろな関わり方ができるようになりました」と、伊藤氏は語る。

もちろんパルコにもメリットは存在する。サービス上でプロジェクト化したイベントが、パルコが持つライブハウス、全国にあるイベントスペースなどの集客や話題づくりになるからだ。これらのリアルなスペースでイベントを行えることこそ、BOOSTER最大の特徴でもある。

通常のクラウドファンディングでは、開催が決定していないイベントに対して、ハコ(場所)を抑えること自体がリスクであるため、クラウドファンディングを通じてリアルなイベントは行いづらいという傾向がある。しかし、パルコが自社の施設として多くの会場やスペースを持っていることで、BOOSTERでプロジェクトが成立した際には、それらの会場を利用することが可能になるのである。

サービス開始から半年が経過し、今後はプロジェクト数も今よりペースを上げて増やしていくのだという。

クラウドファンディングの根底にある、パルコのインキュベーション精神

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引用:BOOSTER

パルコはもともと「インキュベーション」という精神をもっており、若い才能を育てることを大事にしている。その精神は、パルコの店舗づくりにも表れているのだという。

例えばパルコのテナントは、いわゆる駅ナカにあるような店舗ではなく、まだ有名ではないが伸びしろがあるような、ユニークなブランドの誘致も積極的に行っていることが特徴である。例えばサマンサタバサは、1994年に渋谷パルコで初出店を行った後、人気を拡大して現在は世界で416店舗(2015年2月時点)を持つまでに至っている。

このような想いはBOOSTERにも現れている。「パルコとして一緒に成長出来るものを、BOOSTERを通じて見つけ出し、つくり出していきたいですね」と、伊藤氏は語っている。

また前にも述べたように、パルコは渋谷クアトロのようなライブハウスを始め、映画館やギャラリー、さらに全国にはイベントスペースが存在している店舗もある。これらリアルなプラットフォームを持ち、それをBOOSTERのプロジェクトのイベントとして活用できることこそが、パルコならではのクラウドファンディングサービスといえるだろう。

パルコとBOOSTERが描くクラウドファンディングと小売業の未来

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このようなパルコならではのクラウドファンディングサービスを通じて、パルコとBOOSTERはどのような未来像を描いているのだろうか。

「才能ある個人が正当に活躍できる世界を実現していきたいですね。今の若者は、リスクを取らず、自分の夢を潰してしまうことが多いと思います。押し付けがましくなく、そのような個人が声を発せれるようなプラットフォームをつくっていきたいです」と、伊藤氏は語る。

大量消費ではないこれからの個人の時代において、パルコは生活者をつなぐC to Cのプラットフォームという存在であり続けたいという。

また、クラウドファンディングに参加すること自体が、スタイリッシュでかっこいい消費である、という世界をつくり出していきたいという。そのように人々の意識が変わることで、もっと気軽にクラウドファンディングを通じて生活者同士の交流や、個性的なモノが生まれていくのではないだろうか。

「クラウドファンディングは、今あるマーケットにないような突拍子もないものが生まれる可能性を秘めています。今はある程度どのジャンルでも、売れ筋や型というのが決まっていて、どのメーカーも、その型に向かっているような時代です。マーケットの主流にはならないけど、個性的なモノがクラウドファンディングから生まれてきて欲しいですね。」

最後に伊藤氏は、パルコのような商業施設がこれからの時代に果たすべき価値を、以下のように語ってくれた。

「BOOSTERもそうですが、オンラインだけで完結するのではなく、オフラインの場を持っていることが価値になります。 商業施設は、ただ商品を販売する場を提供するのではなく、お客様がコミュニケーション出来る場所として価値を創り上げていくことが大事なってきます。」

商業施設という枠組みにとらわれず、常に新たな取り組みを行い、ブランドや個人が世の中に価値を発信できるプラットフォームをつくり続けているパルコ。

最近も、ビーコンの全館導入による人流解析や、Ingressとの連動企画など、最新技術を用いた取り組みも積極的に行っている。そんなパルコが次につくり出す未来はなにか、今後に注目していきたい。

▼今回紹介した「BOOSTER」のHPはこちらです。ぜひご覧いただき、皆様もプロジェクトに参加してみてはいかがでしょうか?

http://www.booster-parco.com/

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