引用:https://www.bartelldrugs.com/
※Arch for Startupより寄稿
Bartell Drugs社(以下Bartell)はシアトル発祥のドラッグストアである。彼らが”アメリカで最も古い親族経営のドラッグストア”と自負するように、1890年に創業し、今年で125年と非常に長い歴史を持つ。
しかし非上場を貫き、店舗数は2015年現在で63店舗と、堅実に親族経営を貫く姿勢が伺える。
しかし言うまでもなく1世紀の間に市場は大きく変わった。前CEOであるGeorge D. Bartell氏が「どの店も同じ商品を売っている」と言うように、医薬品を売っているだけでは生き残れない市場に変わった。
順位 | 会社名 | 本来の業界 | 歳入(単位:$1M)[1] |
1 | Wal-Mart Stores, Inc | スーパーマーケット | 476,294 |
2 | CVS Health Corporation | ドラッグストア | 139,367 |
3 | The Kroger Co | スーパーマーケット | 108,465 |
4 | Amazon.com, Inc | Eコマース | 88,988 |
5 | Walgreen Co. | ドラッグストア | 76,392 |
[1]データはそれぞれyahoo financeから抜粋。
アメリカにおけるドラッグストア市場に参画する企業を売り上げ別に見ると、本来ドラッグストアではない会社が参入し、成功していることが分かる。
元来ドラッグストアを経営していたものにとって、このドラッグストア市場の競争の激化は死活問題である。実際George D. Bartell氏がCEOに就任した1990年当時、Bartellの最大の競争相手であったPay ‘n Save社は早くも1992年に他社に買収された。
しかしBartellはこの激しい生存競争で生き残っているだけでなく、堅実な伸びを見せている。
今回は前回の記事(Staples)に続き、競争が激化する市場で活路を見出す小売店Bartell Drugsの戦略を紹介したい。
ドラッグストアとクリニックの融合『CareClinic』
引用:http://www.ghinnovates.org/?p=5214
CareClinicは2013年に導入された新しい店舗内サービスである。
特徴は:
・店舗内に看護師が常駐し、一律$75で診てもらうことができる。(軽い怪我や病気のみ。)
・処方箋をもらい薬局で受け取るまでの流れが店舗内で完結する。
・夕方5時以降や、週末にもサービスを受けることができる。
採血・レントゲン・緊急性を伴う病気・重大な怪我以外の病気や症状を診てもらうことができる。地元シアトルで医療サービスを提供するNPO団体のGroup Health Cooperativeとパートナー契約を結んだことで実現したサービスであり、看護師はGroup Health Cooperativeから配属される。
また、このサービスから生じる収入は全てGroup Health Cooperativeに入り、場所代などはBartellが負担する。
2013年に試験的に導入されたこのサービスは3店舗で試験的導入がされ、高評価だったため2015年内に二倍以上に増やす方針だという。
CareClinic導入を仕掛けたCEOのBrian Unmacht氏は、「これは質の高いサービスの一例であり、実店舗だからこそできることである。オンラインで同じことをするのはより難しいだろう。」と述べており、この新形態の店舗はオンラインとの競争を見据えた戦略の一つであることが伺える。
積極的なCSR活動によるイメージ戦略
CSRといえばハーバード大学でもCSRとビジネスについて特集されるように、今非常にホットな話題である。BartellはそのCSRでの貢献が非常に大きいことが知られている。
例えば、2014年シアトルにあるアメリカン・フットボールチーム「シアトル・シーホークス」の重要な試合に際して、Metropolitan Market(シアトル発祥のスーパーマーケット)と提携し世界一大きなシーホークスの旗を掲げるイベントを行った。
(アメリカン・フットボールではピッチの上に各チーム11人ずつ建てることから、「サポーターが12番目のプレーヤー」であることを意味する12の旗)
また、現CEOのBrian Unmacht氏はBartell史上初となるBarber一家以外の役員であるが、シアトル発祥のアウトドアショップREI社に27年間勤め上げ、その間に8店舗から130店舗に増やした生粋のシアトル人である。
※そんなREIの店舗戦略とデジタル戦略についてまとめた記事はクリックして参照。
BartellのCSRはこれだけにとどまらない。食料寄付を行うシアトル発祥の慈善団体Food Lifeline、筆記用具を小学校へ寄付する団体のSchool Tools for Kids in Need、病院の子どもたちにテディベアのぬいぐるみを送るHarrison FoundationによるTeddy Bear Patrolを始め、退役軍人のサポート等数多くのボランティア活動や寄付活動をしている。
「アメリカのコンサルタントベスト25」にも選ばれたBen Burke氏は「この事業規模で、家族経営というスタイルで、これだけ長い間成功し続けているということは非常にユニークである。シアトルに根を張っていること、そこでストーリーを持っていること、それらは計り知れないほど重要だ。」と述べている。
まとめ
今回は私達Arch for Startupと同じくシアトル発祥のドラッグストアBartell Drugsの地域密着型経営を紹介した。記事を作成するに当たり多くの資料に目を通すなか「地元シアトルを愛し貢献してきたBartellだからこそ、激化した市場競争の中でも顧客に見放されないのではないか」と考えさせる。
激しい競争を乗り切るBartellの地域密着型経営に、今後もますます期待が高まる。
■この記事に関する質問やその他リサーチの依頼などはこちらのアドレスまでご連絡を!
▼関連記事一覧
※「Arch for Startup」より寄稿
Arch for Startup
クラウドコンピューティング分野で世界一と言われるシアトルを拠点にクラウド関連やスタートアップ情報を発信。
●HPアドレス:
http://www.archforstartup.com/
●Facebookページ:
https://www.facebook.com/arch4startup
▼関連記事