起死回生!米家電大手「ベストバイ」の戦略

WRITER : Editorial department

  小売業界トレンド

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※「Arch for Startup」より寄稿

2015年の春にアメリカの家電量販店大手のベストバイが新たに技術開発センターを我々”Arch for Startup“が拠点とするシアトルに設立し、50人以上のITエンジニアを雇用する計画を進めている。

ベストバイのみならず、ここ数年でアメリカの小売大手のシアーズステープルズが相次いでシアトルに技術開発拠点を置くようになっている。

なぜ小売業者が技術開発センターを設立する必要があるのか。それには小売各社はAmazon等の大手ネット通販に大きく売上シェアを奪われ、実店舗だけでは戦えなくなっており、WEB開発やテクニカルサポートに力を入れざるをえない事情がある。

しかし、WEB等の技術開発を外部のIT企業に頼るのではなく、経験豊かなエンジニアを獲得して自前で開発を行うことにより、顧客のニーズにマッチした柔軟なサービスを提供できると考えているようだ。

また技術開発拠点にシアトルを選ぶ理由には、ベストバイのeコマース責任者であるMary Lou Kelleyは次のように述べている。

「シアトルにはMicrosoft、Amazonに代表されるようなIT企業が数多く存在し、特にクラウドやeコマースに強い。シアトルはそれらの技術に精通したエンジニアを獲得するには絶好の場所である。」

今回はネット通販専門の企業に対抗すべくWEBサービスと実店舗を活かすことで再興を図るベストバイの戦略を紹介したい。

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Best Buy, CTO, Bala Subramanian and president of e-commerce, Mary Lou Kelley

引用:Geekwire

ベストバイはアメリカに約1,400店舗そして世界で130,000人以上の従業員を抱えた家電量販専業のリーディングカンパニーだ。家電業界の中ではアメリカで売上一位を誇っているものの、2013年以前はネット通販の煽りを受けて売上を落としていた。

そこでベストバイはここ2年間でクラウドインフラとモバイル・アプリケーションの開発に注力し、オフラインの店舗とオンラインのWEBを活かしたオムニチャネルへの転換を図ってきた。

A4S3

引用:Best Buy

オムニチャネルの真髄「フリーストアピックアップ」

ベストバイはフリーストアピックアップというサービスを実施し、以下の様なことを可能にした。

  1. ネットで注文した商品を店舗で受取が可能
  2. 気になる商品が近所の店舗に無い場合に、ネットで在庫のある他店舗から近所の店舗に輸送が可能
  3. テレビや冷蔵庫といった家電製品は店舗だけでなく倉庫でも受取が可能
  4. ネットで注文時の値段から受取の際の値段が下がった場合は、更新された値段で購入可能

ショッピングサイト上に“ストアピックアップ”のボタンを追加しただけで購買率が上昇したという。意外にもベストバイの顧客の40%がネットで購入したにも関わらず、店に商品を直接取りに行きたいと考えているようだ。これには誰も想定していなかったと、eコマースの責任者は述べている。

脱ショールーム化「プライスマッチングポリシー」

日本では量販店で商品を直に触れた後に価格.comにて商品の値段を比較し、一番安い店で購入するというのが最近の消費者の常套手段だろう。アメリカの消費者の間でも同じようなことが行われているが、それを解決するためにベストバイが打ち出したのがプライスマッチングポリシーだ。

これはベストバイの店舗で消費者がネットで調べた安い価格を提示すると、その価格で販売してくれるというものだ。これなら実物を見て即座に安い価格で手に入るので顧客にとっては嬉しいだろう。

しかし、ベストバイにとっては売上が伸びるものの利益率が減少するために決して大きなメリットにはならない。他の部分で如何にコストを下げるかが課題になっているようだ。

ショッピングサイトの改善

ベストバイは以下の点を改善することでショッピングサイトにおけるコンバージョン率向上を目指している。

  • 店舗の在庫をショッピングサイトの在庫に即座に反映させるシステムの構築
  • 製品のパーツや専用アクセサリーを簡便に検索できるサイトの公開
  • 購入までのクリック数の減少
  • レコメンド商品の増加
  • プロダクトレビューの増加
  • オンラインの価格を店舗の価格と統一
  • モバイルユーザビリティの改善
  • 顧客からのフィードバックをネットで受付

これらの他には、店舗で受取した中古品、返品された商品、在庫処分対象の商品をすべてショッピングサイトに掲載することで、潜在的な買い手を見つけやすくなり、店舗のみで販売するよりも値下げを最小限に抑えることが可能になったという。

▼参考記事

http://www.twice.com/news/retail/best-buy-opening-digital-development-center/56102

サムスン、マイクロソフトの専門店

ベストバイはサムスンやマイクロソフトといった大手ベンダーとパートナーシップを結び、各社の専門店サムスンエクスペリエンスショップウィンドウズストアをベストバイ店舗内に設置し、各社の専門販売員を常駐させている。

これによりベンダーにとっては消費者とのリアルな場での接点が増え、存在感を高めることができ、ベストバイにとってはベンダーとの関係をより強固なものにすることができる。このパートナーシップは両社にとって有益に働いている。

A4S4

サムスンエクスペリエンスショップ

引用: cnet

▼参考記事

http://marketrealist.com/2015/01/best-buy-joins-forces-key-suppliers/

ベストバイのエンジニア集団“Geek Squad”

本記事の冒頭に記したエンジニアの増員は技術開発だけでなくテクニカルサポートの強化のためでもある。サポート対象範囲はPCから家電、ネットワーク、そして最近流行しているスマートウェアラブルと幅広い。

24時間無休で対応し、電話、ネット、店舗から申込可能だ。PCトラブルの場合はITエンジニアがPCの遠隔操作で顧客の問題を解決してくれる。

またベストバイのYouTubeチャンネルには60,000以上の製品の使い方を紹介する動画を公開している。如何に利便性を上げ、顧客の満足度を向上させるかという姿勢が感じられる。

▼参考

https://www.geeksquad.com

以上の戦略の多くはベストバイの競争力と効率性を高め、実店舗を持たないネット通販専門の企業にはできないことだ。ベストバイのネット通販大手に対する強みは皮肉にも実店舗を持つことである。各店舗がミニ物流センターとなり、時には相談所となって利便性を高めている。しかし効率性ではアマゾンがまだまだ優勢だろう。今後、ベストバイは既存の実店舗をどのように活かし、ネット通販に対抗していくのかが興味深い。

※「Arch for Startup」より寄稿

Arch for Startup

10904170_709467309173264_1970155646_nクラウドコンピューティング分野で世界一と言われるシアトルを拠点にクラウド関連やスタートアップ情報を発信。

●HPアドレス: http://www.archforstartup.com/

●Facebookページ: https://www.facebook.com/arch4startup

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