【インタビュー】リアル店舗の逆襲!東急ハンズキーマンが描く未来のオムニチャネル

WRITER : Editorial department

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2014年11月末に「東急ハンズアプリ」をリリースしてから約2ヶ月で7万ダウンロードを記録。カード機能のデジタル化のような主要機能に加えて、コレカモ成長日記やバッジのようなゲーム性を交えた仕掛けにより、東急ハンズファンの心を確実につかんでいる。

2009年7月からTwitterをはじめとしたソーシャルメディアの運用で顧客とオンラインでのコミュニケーションを取り、2010年からレコメンド機能を搭載したTwitterロボットのコレカモ.netを展開するなど、他社とは一線を画したオムニチャネル化を推進している東急ハンズ。東急ハンズオムニチャネル推進部オムニチャネルコマース課ディレクターの緒方恵氏(以下、緒方氏)の言葉から、東急ハンズのオムニチャネル施策の考え方を紐解いていく。

全社巻き込み型のオムニチャネル戦略と店舗密着型の施策実行

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近年オムニチャネルと同様に、注目を集めているキーワードにO2Oがある。東急ハンズにとってのオムニチャネルの位置付けとして、「O2Oが短期的な販促施策であるのに対して、オムニチャネルは経営戦略である」と緒方氏は語ってくれた。

O2O施策の目的は、クーポン提示やポイント付与など、主に集客にスポットを当てることが多く、1部署もしくは店舗ごとに担当及び決裁を分担する施策が大半であるのに対して、オムニチャネル施策の目的は、東急ハンズ全体の売上増加や接客の質の向上を目指すものであるため、担当者や担当店舗の範囲では対応しきれない部分が出てきてしまう。

加えて、店舗では顧客が店舗で商品を見て、WEBで購入するショールーミングによって、店舗の売上が奪われてしまうという考えを持つ人はいまだ少なくはない。しかし、小売各社のEC売上の拡大を見ても分かる通り、最終的には、会社全体の利益向上に繋がる施策であるということを理解しなくてはならない。そのため、東急ハンズ全体を巻き込んだオールハンズの姿勢が常に求められる。

そこで緒方氏が大切にしているのは、”店舗とWin-Winの関係(等価交換)”という考え方だ。

「お店が関わる場合は、こちらからただ”やって下さい”とお願いするだけでは、本社と店の関係は悪くなるだけです。”やってください”と、”やります”、”こんなメリットがあります”を等価で持たなければ良い関係は築けません。というわけで、弊社ではアプリ経由の商品出荷のほとんどを本社の通販部隊で巻き取りながら、売上は全て店舗に還元しています。業務巻き取りとアプリ経由の売上を全部店舗に還元することで、店舗の方を巻き込んだ前向きな取り組みと宣伝が実現しているのです。」と緒方氏は語る。

驚いたことに、緒方氏は新しいサービスを1つ作るたびに、利用する全店舗に足を運んで、顔を合わせたコミュニケーションを取るという。

「新しいオペレーションはその場で全て理解してもらうのは難しく、かつそもそもそれは主目的ではありません。一番大事なのは店舗の担当者に、困ったことがあったら緒方に連絡すればいいのねと思ってもらうということ。フォローし続けますという姿勢と熱を伝えるための行脚ということです。」

WEB側と店舗が協力し、オールハンズで取り組むことが必要不可欠なため、緒方氏は現場の良い相談役になるべく、WEB側と現場の架け橋という重要な役割を担っている。

未来の店舗を創るための三つのポジ・ネガ要素

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緒方氏は、未来の店舗を創る為に「ポジティブ」と「ネガティブ」の各々で3つの要素を意識している。ポジティブ3要素とは「買いやすさ」「選びやすさ」「楽しさ」、ネガティブ3要素とは「妨げない」「ストレスをかけない」「迷わせない」を指している。緒方氏は、ポジティブの3要素を高めていき、ネガティブの3要素を改善し続けることが、未来の東急ハンズを創っていくと語った。

「買いやすさ」は、商品を店頭でスキャンしてリスト化して、アプリ上で在庫の確認ができる点などが含まれる。

また、アプリ上で在庫の確認ができることで、「選びやすさ」も同様に向上して、アプリのスキャン機能を前提とした商品を陳列するラックの構築にも取り組む。

「楽しさ」は、既に楽しい店舗作りをしている現場のプロ達と、アプリを上手く連動させて顧客に価値を提供することを目指す。また、演出を通じて店舗での顧客体験を豊かにしていくことも「楽しさ」に含まれる。

また、「妨げない」とは、顧客が購入を決意した時に、その後に用事がある、など何らかの理由で、購買を思いとどまることをなくすことである。たとえ、店頭で購入しなくても、アプリで商品をスキャンして「ほしいものリスト」に登録しておけば、後で気になったタイミングで商品を購入して、自宅に届けることができる。

「ストレスをかけない」とは、例えば店舗で商品の説明を受けたい時、欲しい商品があるのにどこに置いてあるのか分からない時に、店員が捕まらないケースを減らしていくことである。

「迷わせない」とは、例えば正しいタイミングで正しい接客を行えば、顧客がどんなニーズで商品を探していて、そのニーズに最適な商品はどれか、というアドバイスができることだ。

3つのポジ・ネガ要素に照らして、アプリを介して現在店舗が抱えている課題を解決していこうとするプロセスで、店舗運営で改善できる部分はまだまだあるということに気づかされたのだと緒方氏は語る。アプリ開発が現場のオペレーション改善にもたらした効果はとても大きいようだ。

実店鋪の強みを武器に反撃の狼煙を上げる東急ハンズ

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インターネットの登場以降、実店舗を持つ小売店は”ショールーミング現象”によって大きな打撃を受けていた。

「インターネットがでてきてから、リアルからネットに大量に人が流れた。店舗で商品を見て、楽天やAmazonで買う。僕らが小さい頃は、東急ハンズに行けば何でも揃うという意識があったのですが、楽天やAmazonが出てきてから商品数では敵わなくなってしまった。」

そこで、東急ハンズが早々に取り組んだのは”顧客体験”の創造というテーマであった。

「東急ハンズには、ヒントマーケットという考え方があって、お店に来てくださった方ひとりひとりに丁寧で適切なコンサルティングセールスを行います。ある商品を買いにきたけど、実はこちらの商品のほうが良かったから、こちらをおすすめしたことでより喜ばれたなど、適切なヒアリングを通じて潜在的なニーズを掘り起こして提案するということ。また、ユニークなディスプレイでお客様の創造力を掻き立てるなども含まれますが、要するに接客や陳列を通じて、商品だけではなくてヒントをひとつ持って帰ってもらおうという考え方が、東急ハンズの社員には徹底されているのです。」

インターネットの登場はひとつの要因にすぎないが、東急ハンズは店舗での接客の価値の見直し、そして自分たちの企業の強みを再確認できた。

その後、オムニチャネル時代が到来し、店舗とWEBの接点が増えてカスタマージャーニーが複雑化し始めた。近年、WEBで注文した商品の店舗受け取りサービスや、WEBで気になった商品を予約し、店舗で試着するサービスなど、WEBから店舗へ送客するサービスが増えている。店舗を持つ企業にしか実現出来ないサービスの登場によって、店舗を持っているという価値がさらに高まった

インターネットの良さを実店舗に活かし、実店舗の良さをインターネットでも体験できるようにする、WEBと実店舗をシームレスに活用できる環境を提供することで、新しい顧客体験を創造する時代が到来したのだ。

これにより、「ネットストアもありかつ、実店舗をもつ東急ハンズが、EC全盛の時代に、反撃の狼煙を上げる準備が整ってきたのです。」と、緒方氏は語る。

東急ハンズが掲げる未来のエアカート構想

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顧客行動分析で世界的権威であるパコ・アンダーヒルの知見をまとめた「ついこの店で買ってしまう理由」によると、アメリカの大手ショッピングセンターが行った実験では、買い物カゴの大きさを大きくすると売上が増加することが分かっている

緒方氏は、「それならカートが無限であれば良いのではないかと考えたのです。その場で買えるものはそのまま買って、残りはアプリでスキャンしておけば、あとからいつでもどこでも買えるようになっている、つまりお客さまのカートは無限になる。究極的な目標は、東急ハンズの店舗から買い物かごを取り除くこと。それぐらいの気持ちで取り組んでいきたい。」

近年、ASPRA※1というオムニチャネル時代の消費者行動モデルが定義された中で緒方氏は今後はASPRAのReceive(受け取り)とAfter(事後サービス)を充実させていきたいと語ってくれた。

受け取りに関して緒方氏は、「受け取る場所の制約をなくしていきたい。今は店に取りにいくか、家に届けてもらうかの二択しかない。今後は選択肢を増やしていくことで、時間と場所の制約を受けないことで、購買体験が生き生きと輝き出す。」と語る。また、事後サービスに関しては、「Appleのウェブレシートや、アプリ上の購買履歴がそのまま保証書になるようなサービスを提供していきたい」と更なる野望を述べた。

現状に甘んじることなく、「オムニチャネルはスタートライン」と位置づけ、次々に新たな施策を打ち出す東急ハンズ。年内に100万ダウンロードを目指す東急ハンズのアプリを起点にした今後のオムニチャネル戦略に今後も注目していきたい。

今回ご紹介した話題の東急ハンズアプリのダウンロードはこちら(iPhone版こちら(Android版)

【アプリ情報】

名称:東急ハンズ

対応端末:iOS、Android

[App Store]:「東急ハンズ」

[Google play]:「東急ハンズ」

価格:無料

※1 ASPRAは、オムニチャネルで店舗が顧客に提供する価値を、Attention(興味)Select(選択)Purchase(購入)Receive(受け取り)After(事後サービス)に分類したものである。

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