三越伊勢丹、ローソン、ヤマト運輸の対談から読み解く流通業界の課題と展望

WRITER : 野田 勝

  小売業界トレンド

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11月7日にG1経営者会議2014が行われた。その中で、株式会社三越伊勢丹ホールディングス(以下三越伊勢丹)の大西 洋氏(以下大西氏)、株式会社ローソン(以下ローソン)の玉塚 元一氏(以下玉塚氏)、ヤマト運輸株式会社(以下ヤマト運輸)の山内 雅喜氏(以下山内氏)が、ヤフー株式会社 執行役員 ショッピングカンパニー長、YJキャピタル株式会社 代表取締役、アスクル株式会社 社外取締役を務める小澤 隆生氏をモデレーターとして交えて、流通業界の現状、課題、展望について意見を交わした。

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“流通革命”~新たな覇者となるプレイヤーは誰か~G1経営者会議2014全文【前半】

“流通革命”~新たな覇者となるプレイヤーは誰か~G1経営者会議2014全文【後半】

今回は、前半・後半に渡って掲載した当対談の内容を、三越伊勢丹、ローソン、ヤマト運輸の各社が抱える課題と、解決策という観点から要約する。

百貨店業界最大手の三越伊勢丹が抱える”2つの課題”

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三越伊勢丹が抱える課題は主に2つあり、1つは拡大するEC市場への対応が遅れていること。もう1つは、本来百貨店の強みであるはずのおもてなしの精神で、もはやナンバーワンになれていないという点である。

百貨店にとって最大の脅威はEC市場の拡大

1つ目の課題に関して、小売業全体の市場規模が136兆円から140兆円であるのに対して、EC市場は現状11兆円から12兆円と言われている。11兆円という数字は、2012年から2013年百貨店業界全体の市場規模約7兆3,693億円を上回っている。

この大きな市場に対して、具体的な策を講じれていないというのが、三越伊勢丹の課題であると大西氏は語っている。対談後の質疑応答の中で同氏は、10年スパンで最も脅威だと感じるものは何かという質問に対し、EC市場の伸びであると答えていることからも、その危機感が伺える。

ただし、EC市場に力を入れていくとすれば、おもてなしの精神や、バイヤーの目利きといった強みを生かして、他のECサイトとは差別化できると語っている。今後、これらの強みを具体的にどうECに繋げていくのかに注目である。

大西氏「高の労働条件で働いてもらわなければ、最高のおもてなしは出来ない」”

2つ目の課題に関して、百貨店はこれまで、顧客に快適な空間で質の高いサービスを提供することで成長を遂げてきた。しかし大西氏は、現在日本で最もおもてなしの精神をサービスとして提供出来ているのは、百貨店ではなく、ホテルとディズニーランドであると語っている。

大西氏は、本来の百貨店の強みであるおもてなしの精神と質の高いサービスを取り戻す為に、人事制度の抜本的な改革が必要であると説いている。

具体的には優秀な販売員に対してインセンティブを出して、能力のある人間が報われる体制を作っていくことを挙げている。目先の利益を度外視して、営業時間の短縮、休業日の設定などを通して、従業員に”最高の労働環境”で働いてもらうことで、最高のサービスを実現していくと語っている。

多様化し続ける顧客のニーズに、2つの切り口で応え続けるローソン

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ローソンの玉塚氏が語るには、顧客のニーズは絶えず多様化し続けているという。質のいい商品を求める顧客と、安さを求める顧客の二極化構造に加えて、若者、シニアといった年代の違いや性別の違いによってもニーズは変わってくる。特にコンビニは、生活に必要な物を全て提供するビジネススタイルなため、エリア毎に微妙に異なる客層の違いにも敏感に対応していかなければいけない。

全国12000店舗の規模の強みを生かしたマーチャンダイジング

この課題解決の鍵を握るのは、独自のノウハウを生かしたマーチャンダイジングと、「ローソンストアヒャク」や「ナチュラルローソン」の様に多様なコンセプトを持つ店舗を展開することである。

マーチャンダイジングに関しては、全国1万2千店舗という規模の強みを生かして、各出店エリア毎に微妙に異なるニーズに合わせて、店舗に置く商品を変えることで多様なニーズに対応する。また、2500台にも上るトラックをフル稼働して、常に顧客が求めるものが店頭にある状態を保てるのも強みである。

ここで課題となってくるのは、エリア毎に異なる顧客のニーズをどこまで正確に把握できるかという点である。従来のPOSシステムでは、購入された商品のデータと、その店舗で購買を行った顧客の属性はある程度把握できるものの、それではその店舗がそもそも顧客の求める商品を提供できていなかった場合、顧客は購買を行わないためデータから漏れてしまう。店舗で購買を行わなかった来店客のニーズをどこまで把握し、マーチャンダイジングに生かせるかどうかが飛躍の鍵を握りそうだ。

”玉塚氏「チャレンジの中で業態を進化させていくのが凄く大事」”

多様なコンセプトの店舗を展開するという点に関して玉塚氏は、「私たちの商売で正しい答えを見つけていくには、PCDAを高速で回していく中で、直接お客様に聞いてみたり、チャレンジの中で、あ、こういうことなんだ、っていう色々な発見があって、業態が進化していくっていう事が凄く大事なんです。」と語っている。

ローソンという大きなくくりの中で、質へのニーズに応えるナチュラルローソン、安さへのニーズに応えるローソンストアヒャク、エリア毎に異なる細かなニーズには、綿密な顧客観察を通じて、ベーシックな青色のローソンが対応していることからも、玉塚氏がいかに顧客のニーズの多様性を意識しているかが見て取れる。

世界的なEC市場の拡大を足下から支えるヤマト運輸

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冒頭で述べたように、EC市場は近年急速に拡大してきている。ECの利便性を足下から支えているのは言うまでもなく物流である。ECは店舗を持たず、接客を介在しない。従って、ECの利便性は実は物流業者のサービスの質によって判断されるのである。

顧客の好きな時間に、好きな場所で商品を受け取れるサービスを提供出来れば、顧客のEC利用満足度は高まり、その規模拡大に拍車がかかるであろう。

”山内氏「私たちは各国で展開した宅急便の物流網を、日本を含めてボーダーレスに繋げていきたいと考えております。」”

ヤマト運輸は世界を宅急便の物流網で繋げることを目標としている。そこで課題となっているのが、現地の従業員に対し、いかに日本のおもてなしの精神を浸透させるか、ということである。

山内氏は「上海で始めたときは、現地のセールスドライバーを採用してお届けしてもらうんですが、彼らは帽子を取って頭を下げるっていう事を拒否しました。それで退社した人間もいました。俺が荷物を持っていってやってるのに、なんで受け取る側じゃなくて、俺がお礼をいうんだ、という感覚ですね。自分が主という形なんです。」と、上海で直面した現地従業員の教育の難しさを吐露した。

”洗脳”と”リーダー教育”が海外展開の成功の鍵を握る

この課題に対して、山内氏は繰り返しロールプレイングを行うことで、従業員を半ば”洗脳”していくことと、現地で日本のホスピタリティの精神に理解を示す人材を探してきて、リーダー教育を行うことで解決していくと語っている。

日本の宅急便の質を担保したまま世界に広げることが出来れば、世界規模でのEC市場は更に拡大していくだろう。例えば先日のIPOで時価総額25兆円を記録した中国最大のECサイトAlibaba.comを抱える中国では、物流にまつわるトラブルが後を絶たない。その市場に日本の宅急便が切り込んでいければ、世界規模でEC市場の拡大が見込まれる。ヤマト運輸の海外展開戦略から目が離せない。

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成城石井買収からみるローソンのオムニチャネル戦略

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「国内注目オムニチャネルサービス15選」を公開しました。2016/02/12

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今回は、累計500万ダウンロードを突破した有名なサービスから、2月にリリースされた新しいサービスまで、国内小売企業が取り組むデジタルテクノロジーを活用した注目のオムニチャネル事例をまとめました。

記事内では取り上げることのできない様々な情報を取り上げております。

是非、小売業界のマーケターの皆様に事例研究やサービス導入をする際の参考資料としてご活用いただきたいと思います。

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