2016年も、小売業界においてオムニチャネルが発展してく。
オムニチャネル化により、顧客は、オンライン・オフライン問わず好きな時に好きな場所で商品を購入できるだけでなく、商品を知り購入に至るまでのプロセスの中で商品との接点が増えることによって、より個々のニーズに合わせた意思決定が可能になる。
一方で小売業界には、テクノロジーを活用し、顧客満足度向上、競合との差別化によって、顧客をファン化し、LTV(顧客生涯価値)を引き上げていく施策の実行が求められる。
今回の記事では、2016年ますます注目が集まることが予想される、小売業界におけるテクノロジー活用のトレンド5つを紹介する。
1.IoTを用いた接客の効率化
引用:ファッション×IT
IoTは、販促メールやクーポンなどのプッシュ通知をするiBeaconといった、プロモーションツールとしての活用のみならず、接客の効率化やサービスの質向上といった目的での活用が進む。
例えばZARAは2016年に、iPadを用いた試着サービスを開始予定だ。試着室に設置されたiPadと1点1点の商品につけられているRFIDタグ(試着された服の履歴や商品情報を、電波を用いて非接触で読み書きできるタグ)のデータを連動させることで、試着室内で、サイズや色の違う商品をフロアスタッフに要求したり、類似商品を探したりすることができる。これにより、顧客の待ち時間を短縮することができ、店舗スタッフによる接客もスムーズ進められると期待される。
さらに、顧客が試着室に持ち込んだ商品をスキャンすることにより、「よく試着される商品」や「買い物カゴに入るけど購入までには結びつかない商品」といったデータを取得することができる。
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2.キャッシュやカードの要らないスマートペイメントの普及
引用:LINE Pay
2016年、金融とテクノロジーを融合させたフィンテックのサービスが次々と生まれ、個人レベルのお金の貸し借りから会社の取引慣行まで、私たちの生活をより便利にする。
例えば、LINEの提供する「LINE Pay」は、2016年上半期にスマートフォン端末を用いた韓国での外貨両替・出金対応サービスを開始予定だ。
韓国の新韓銀行と提携することで、日本ユーザーのLINE Payにチャージされている金額のウォンへの両替および、韓国国内での出金対応を目指すという。
今後、様々な国の銀行と、モバイルペイメントサービスが業務提携を結ぶ動きが広がれば、外国を訪れた際、手持ちのスマホから現地銀行のATMを使って現金を受け取ることができるようになるだろう。
しかし、サービス普及には、スマホを紛失した際やサイバー攻撃を受けた際のセキュリティの強化は必須である。また、利用額に応じてポイントがもらえたり、低価格な手数料で利用できるといった、クレッジットカードでの現地出金や現金両替を超えるお得で便利で安全なサービスを提供する必要がある。
▼参照
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3.ロボットによる接客
人手不足や従業員教育といった店舗経営における悩みを解決すべく、店舗集客から、商品提案までを行うことのできる、人工知能を搭載したロボットがさまざまな場面で登場し、新たな顧客体験をもたらす。
2016年春より、ヤマダ電機ではPepperの多店舗導入が予定されており、人工知能を最大限に活用したスマートロボットが接客に取り組んでいく。
また、1月27日・28日には、50種類のビジネス向けPepper「Pepper for Biz」による、最新ソリューションが集結するイベント「Pepper World 2016」が開催さた。そこでは、小売業界のみならず、受付、医療、教育など様々なジャンルのPepperが登場した。
本イベントを主催したソフトバンクは、3月末には表参道にPepperのみが接客する世界で初めての携帯ショップが期間限定でオープンすると発表した。
集客から受付、商品の案内、プランや機種を選び新規契約を結ぶまでをPepperが分担しながら進めていくことができるという。
いままで客寄せという目的で導入される事例の多かった人間ロボットが、2016年は人間の不足を補うべく、店舗内で活躍していくことが期待される。
▼参照
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4. 新しいチャネルへの進出
引用:GSM News
オムニチャネル化により今までリアル店舗しか持たなかった企業が、ECサイトでも商品を販売する、またその逆でECサイトのみで商品を販売していた企業がリアル店舗を持つようになる、さらにそれらのチャネルが連携をとるといった戦略を多くの企業が行う。
例えばAmazonは2015年シアトルに書籍を中心に数千点以上のAmazon商品を取り扱う、初のリアル店舗「Amazon Books」をオープンさせた。
iQmetrixCorpの調査によると、31%の買い物客は、購買をする際にAmazonで商品の価格を比較し、76%の顧客はオンラインよりも店舗での購買を好むという。
今回アマゾンがリアル店舗をオープンさせた裏側には、普段Webで商品をチェックするも、リアル店舗で商品を買う「ウェブルーミング」をする顧客を取り巻くといった狙いがある。
この店舗で取り扱われている本は、Amazon.comでのレビューをベースにして行われており、多くの作品が星4つ以上の評価がついたものであるという。
Amazonのレビューと連携させて商品のプロモーションを行うなど、オンラインで蓄積されたデータを店舗運営で活用しながら、新しい顧客体験をもたらす。
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5.オフライン行動の可視化
引用:Retail Next
店舗内の顧客の行動データを取得する動きが今、アメリカを筆頭に日本でも広がりをみせる。
ECサイトやSNSなどオンラインの場合Google Analyticsなどのアクセス解析ツールを用いて顧客の行動を把握することが可能であるが、オフラインの場においては購買商品や売上データといった限られた情報しか取得できず、一人一人をトラッキングすることは特に難しかった。
近年、店舗内カメラの画像解析や、Wi-Fi、BLEを利用することによって、リアル店舗においてより多くのデータ取得が可能になった。
例えば、Retail Nextはインストアマーケティングのサービス提供を行っている。店舗内の監視カメラの画像を解析することで、来店者人数をカウントしたり、来店者の年齢性別といった属性、また店舗内での行動の動線を知ることができる。また、Wifiの電波強度を分析することで、顧客の滞在率を導き出し、店舗内でどの場所に顧客がより多く滞在するのか、POPなどのプロモーションに効果はあったのかなど知ることができる。さらには、気象条件、店舗内の売上げデータや来店人数、行動データを紐付けることによって、新たなマーケティング施策を考案することができる。
「商品購入までのストーリーを描く」ことが2016年の小売業界をさらに進化させる
ここで、オムニチャネル化が広がった背景についてもう一度考えてみたい。
リアル店舗や国内・越境ECサイトといった売り場の多様化、商品のコモデティ化が進む中で、消費者は「状況に合わせて都合のよい買い方を選びたい」、「数ある商品の中からよりよいものを選びたい」という意識が高まった。
その結果、店舗だけで購買行動が完結するのではなく、オンラインとオフラインを組み合わせながら商品を検討〜購入するようになった。
そういった顧客の行動の変化が背景にあって、複数のチャネルをシームレスにつなぐオムニチャネル化の動きが小売業界の様々な企業で広がっているのである。
小売業界は、「いかに店やサイトに来てもらえるか」「いかに一人一人のニーズを把握し商品の提案ができるか」ということを考えるだけではなく、商品検討から購入までどのようなストーリーを描くのかということが、顧客の意識や行動の変化に対応するための大きなカギを握る。
2016年、小売業には、テクノロジーを活用し、様々なチャネルで顧客との接点を結ぶことで、オムニチャネル時代を生き抜いてほしい。
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