「オムニチャネル時代」にAmazonに勝つ方法。大手4百貨店に学ぶO2Oオムニチャネル戦略

WRITER : Editorial department

  オムニチャネル

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(出典:Wikipedia「伊勢丹」)

近年、スマートフォンの普及により、消費者はいつでもどこでも買物ができるようになった。ビデオリサーチインタラクティブ実施の調査によれば、2013年8月に日本国内のスマートフォン所有率は49%となり、いわゆるガラケーと呼ばれる従来のフィーチャーフォンの所有率を抜いた。2014年2月の調査では、スマートフォン所有率は54%と増加し、時間と場所に捕われない消費行動は更に普及していくと予想される。こうした消費者の変化に対応すべく、小売企業はオンラインを含めた全ての顧客接点を統合するオムニチャネル化への対応を迫られている。今回は、日本の代表的な小売企業である百貨店によるオムニチャネル化施策について紹介する。

アメリカの百貨店がAmazonに対抗して「オムニチャネル宣言」

「オムニチャネル」※1とは、消費者に複数の購入チャネルを提供する「マルチチャネル」を発展させたものだ※2。店舗やECサイトなどの販売・流通チャネルを横断的に連携させ、消費者が複数のチャネルを経由して商品の購入ができる環境を構築することを意味する。2011年には、米国の老舗百貨店メイシーズの会長兼CEOが「オムニチャネル企業を目指す」と宣言したことで注目が集まった。

Amazonに代表されるECサイトの登場により、小売市場に占めるEC売上の割合は拡大している。野村総研によると、2012年の日本のEC市場規模は10.2兆円、2018年には20.8兆円と約2倍になると予測されている。それに対し、小売業全体の市場規模はここ数年135兆円前後で推移しており、実店舗を主な販売チャネルとする百貨店などで売上の減少が見られる。そこで、メイシーズはオンライン市場とオフライン市場の両方を狙う対抗策として「オムニチャネル」を打ち出した。結果、オンラインの売上高を2010年から2011年の間に40%増加する事に成功した。日本国内の百貨店も、同様の要因による売上減少を受けて対策を迫られている中、オムニチャネル戦略を展開する事が急務となっている。今回は大手百貨店各社のオムニチャネル事例を紹介しよう。

注目の大手百貨店4選

株式会社三越伊勢丹ホールディングス


(出典:Oka Journal

株式会社三越伊勢丹ホールディングス(以下、三越伊勢丹)は、2013年4月にEC部門を事業部へ昇格させ、日本トイザらスなどでEC部門を立ち上げた実績を持つ中島郁氏を事業部長に採用するなど、オムニチャネル化に向けて最も力を入れている企業の一つである。

中でも注目を集めるのが、2012年12月に立ち上げたファッションニュースサイト「FASHION HEADLINE」※3だ。「FASHION HEADLINE」が発信するコンテンツには、三越伊勢丹の情報は10%未満しか含まれておらず、大半がファッション業界についてのニュースだ。その中立性がメディアとして人気を集め、2014年3月の月間PVは300万を超えた。「FASHION HEADLINE」の戦略目標は、三越伊勢丹が無料で情報発信できる場所を作ること。最終的にはECサイトや店舗への送客を狙う。これまで主なチャネルであったカタログ通販に加えて、メディアを通じた集客で新規顧客層の獲得を目指す種蒔きに見事に成功している。

注目の取り組み

1.オイシックス/三越伊勢丹HDと業務提携(2013年5月14日)

2.ソーシャルコマース「Fancy」に伊勢丹が参画–日本第1号店に(2013年10月23日)

3.三越伊勢丹HD、KDDI/au向けに伊勢丹の商品情報を提供(2013年10月30日)

株式会社高島屋


(出典:賢者が選ぶ!年会費無料クレジットカード大全集

株式会社高島屋(以下、高島屋)は、中期経営戦略の一つとしてオムニチャネル化に取り組んでいる。2013年に、向こう5年間でオムニチャネル事業に130億円を投資する計画を発表したことからも、力の入れようが伺える。2012年6月、高島屋はネット通販サイトを運営するセレクトスクエアを買収後、自社ECサイトと統合した。セレクトスクエアCEOの属健太郎氏は高島屋のクロスメディア事業部長を兼任している。属氏はECサイトの強化を中心に、全社のオムニチャネル戦略を担う。

2014年3月から、自社ECサイト「高島屋オンラインストア」と実店舗の商品在庫情報の統合作業を開始。ところが、オムニチャネル化を進めた結果、ネット通販の売上は伸びたが、その分だけ主力とするカタログ通販へかけるコストが減少し、2014年2月期のクロスメディア事業部の売上高は179億と前期比2.5%減少となった。今後はさらにオムニチャネル化を促進させ、クロスメディア事業の売上の大半を自社EC売上の売上とする方針を掲げる。また、2014年2月には、木本茂常務が社長に就任すると発表された。木本茂常務は「百貨店が持つ商品力や街づくりの機能、オムニチャネルの加速などにより、核となる百貨店事業の力を高めたい」と述べていることから、今後もオムニチャネル化に向けた動きが一層進むと見られる。

 注目の取り組み

1.高島屋 ネット販売強化で再浮上へ、ネット商材の開拓加速(2011年2月1日)

2.高島屋、ファッションEC「セレクトスクエア」を子会社化(2012年6月25日)

3.バレンタイン商戦にスマホ活用 百貨店各社「オムニチャネル戦略」本腰(2014年2月8日

 

エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社(以下、H2O)

(出典:Wikipedia「エイチ・ツー・オー リテイリング」

エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社(以下、H2O)は、阪急百貨店と阪神百貨店、高級食品スーパーの阪急オアシスを展開する小売企業だ。2004年から、特定の地域に集中して出店する「ドミナント戦略」を関西地域で進める。阪急百貨店梅田本店のリニューアルに加え、阪急オアシスを毎年4店のペースで関西地域に出店するなど、関西を中心に事業を展開している。

2014年2月には、関西に基盤を持つスーパー「イズミヤ」を経営統合すると発表。同年6月には、百貨店から総合スーパー、食品スーパーまで約200店舗を擁する複数業態となる。関西エリアに特化したオムニチャネルを構築し、顧客はH2Oのグループ内でいつでも・どこでも買物ができるようになる。今後は、H2Oの個別宅配とイズミヤのネット通販を連携させて宅配サービスなどを実施する予定だ。H2Oのような、特定の地域で力を持つ小売企業が全国規模の小売企業に対抗するためには、地域密着が1つの鍵だ。今回の買収は、セブン&アイなどの全国展開への対抗を考えてのことと予想される。

注目の取り組み

1.阪急阪神グループが大阪梅田でO2Oサービス、NTT・博報堂と共同トライアル(2012年10月4日)

2.関西小売連合の誕生で、巨大流通グループによる顧客獲得競争へ~H2Oがイズミヤを経営統合~(2014年1月31日)

3.【経営】H2Oリテ社長交代、関西を深耕(2014年2月25日)

 

J.フロント リテイリング株式会社

(出典:J.フロント リテイリング株式会社

J.フロント リテイリング株式会社(以下、JFR)は、大丸や松坂屋をグループ企業に持つ関西・中京圏を基盤とする小売企業である。2014年から「2014〜16年度 中期経営計画」をスタートし、その中の重要課題の1つに「リアル店舗の強みを活かしたオムニチャネル・リテイリングの推進」を挙げている。具体的にはネットと店頭で顧客を相互送客する体制を構築し、売上の増加を目指す。最近の動きとしては、2013年2月に、Facebookから、住所を知らない人へ贈り物ができるECサイト「okurune」を立ち上げたことが挙げられる。また2013年11月には、アパレルメーカーのワールドと協業し実現したサービス、「クリック&コレクト」と「エンドレスアイル」を開始した。

クイック&コレクト」は、ネットで購入した服を店舗で受け取れるサービスであり、「エンドレスアイル」は、店頭で欲しい商品が品切れの場合に便利なサービスである。販売員が売場に設置された iPadでECサイトに在庫があるかを確認。在庫があれば、ECサイトで購入後、自宅配送と後日売場での受け取りを選択できる。中でも特徴的な取り組みとしては、2013年4月に創刊されたカタログ「おいしさキッチン」で、調理用品やキッチン雑貨を読者の生活スタイルに合わせて提案するものだ。既存の主要顧客層よりも若い世代の獲得を目的としているため、カタログはスマートフォンやタブレットにも対応。「Dmall」サイトから気になる商品を購入することも可能だ。年齢が高い世代のカタログ通販ニーズを保持しながら、新しい顧客層を取り込む試みとして注目したい。

注目の取り組み

1.大丸松坂屋×ワールド、店頭販売のメリット活かした新ECサービス提供(2013年11月8日)

2.mixi×JFRグループ、熱量の高いO2O企画「Xmas BINGO PARTY」が2週間で10万送客(2013年12月20日)

3.J.フロントがコクヨ通販子会社を買収 オムニチャネルを強化(2013年12月25日)

今後の展望

現在、各百貨店はチャネルごとの情報、特に実店舗と自社ECサイトとの情報統合に注力している。次の段階として、百貨店はカスタマージャーニー分析を活用した、売上向上施策を行うと予想される。「カスタマージャーニー」とは、顧客が購買に至るまでの行動や感情を図で表したものだ。オムニチャネルに積極的な米国百貨店「メーシーズ」は、カスタマージャーニー分析によって売上を増加させる手がかりを得るなどの成果を出している。

メーシーズの調査によると、購買までのプロセスで、スマートフォン・タブレット・デスクトップなどのデジタルデバイスを1つしか利用しない顧客に比べ、デジタルデバイスを2つ以上利用する顧客の購入額は2倍以上であった。上記の例が示すように、百貨店はオムニチャネルを活用することで、ECサイトへ対抗できるだけでなく、売上を増加させることも可能だ。今後は、各国内百貨がどうオムニチャネルを進めるか注目したい。

※1 オムニチャネルの定義は富士通株式会社によると、以下のように定義されている。
“マルチチャネルは、店舗とECサイトなど複数のチャネルで顧客と接することを指しています。ただ、サービスの内容はチャネル毎に異なっており、チャネルが融合しているとは言えません。これに対し、オムニチャネルはサービス内容だけでなく裏側のオペレーションやデータ管理までチャネルをまたがって融合しており、顧客により良いサービスが提供できる点が異なります。”

※2 オムニチャネルとマルチチャネルの違いについてはこちらを参照

 ※3 FASHION HEADLINEとは、三越伊勢丹と株式会社イードの共同出資によって設立された株式会社ファッションヘッドラインが運営するメディア。三越伊勢丹としてではなく、外部メディアとして中立な立場からファッション業界に関するニュースを発信する。

「国内注目オムニチャネルサービス15選」を公開しました。2016/02/12

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今回は、累計500万ダウンロードを突破した有名なサービスから、2月にリリースされた新しいサービスまで、国内小売企業が取り組むデジタルテクノロジーを活用した注目のオムニチャネル事例をまとめました。

記事内では取り上げることのできない様々な情報を取り上げております。

是非、小売業界のマーケターの皆様に事例研究やサービス導入をする際の参考資料としてご活用いただきたいと思います。

資料ダウンロードはこちら

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