紙からデジタルへ。デジタルシフトを成功させた大日本印刷に見るオムニチャネルのこれから

WRITER : 朴 泳虎

  オムニチャネル

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突然だが、皆さんに一つ聞きたい。5年前と比べ、紙を手にする時間とディスプレイ画面を見る時間はどの様に変化しただろうか?世界では資源節約や環境保護を目的としたペーパーレス化の流れが本格化しており、特にアメリカでは既に電子書籍が市民権を得つつある。

世界で最も有名な新聞社の一つであるThe New York Timesは売上の13.6%を電子版から得ており、紙新聞の発行部数と広告収入が年々減少していく中で、デジタルへのシフトを見事に成功させている。電子版の売り上げは順調に伸びており、今後もシェアを拡大していく事が予想されている。

日本の大手印刷会社である大日本印刷株式会社(以下:DNP)も、デジタルへの変革にいち早く乗り出した企業の一つだ。今日現在、DNPはオムニチャネルの取り組みにおいて、日本屈指の先進企業に躍り出ることに成功している。では元々は紙の印刷業者として始まったDNPは、どの様にしてオムニチャネルに取り組む様になったのか。また現在の具体的な取り組みはどういったものか。この記事では、DNPが現在のオムニチャネルに至った経緯と、提供するサービスについて紹介したい。

▼DNPの先進的なオムニチャネルの取り組みに関する事例とインタビュー
http://www.dnp.co.jp/cio/solutions/news/up_file/352/000023a/0000870.pdf

 

DNPの沿革

DNPの歴史は、約140年前に遡る。明治9年10月9日、印刷を通して知識・文化を広めたいという思いから佐久間貞一ら6人により創業された。同社は印刷技術の発展と共に徐々に事業の幅を拡大し、1950年頃の建材分野への進出を皮切りに、徐々に印刷以外の分野に事業を広げ始めた。

主力事業の一つとして企業のプロモーション支援を行っていたが、インターネットやスマートフォンの普及による人々の紙離れを背景とした紙媒体市場の縮小を理由に、拡大傾向にあるデジタルマーケティング分野に進出する必要性を感じていた。

また同時に、紙媒体事業の主なクライアントであった小売企業は、店舗を持たないECサイトの低価格攻勢により、商品以上の「顧客体験」という付加価値を提供する必要性に迫られ、その解決策としてのオムニチャネルに、強い関心を抱く様になった。それに伴い、DNPは徐々にオムニチャネル領域までサービスを拡大していったのだ。

 

DNPのオムニチャネルに関する取り組み

具体的にDNPはどの様にオムニチャネルの取り組みを支援しているのだろうか?ここでは3つのサービスと1つの事例を紹介したい。

① 「DNPモバイルウォレット」

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DNPモバイルウォレットは電子マネー、クーポン、ポイント管理などの、一元管理を可能にしたスマートフォンアプリである。クーポンやポイントは最も多く取り組まれているオムニチャネル施策の一つだが、用途や企業毎に別々のアプリをインストールして起動する必要があり面倒であった。DNPはこれらのプラットフォームを構築する事により、複数企業の電子マネー、クーポン、ポイント管理を一つのアプリ上で実現することを可能にした。技術的には難しくない各機能を統合することで、顧客の利便性を向上させることにより、オムニチャネルをより身近なものとしている。

②「DNPチェックインマガジン」

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DNPチェックインマガジンは、特定のエリア内にいる顧客を対象に電子マガジンやクーポンをモバイルアプリ経由で配信する事ができるサービスだ。顧客が対象範囲内に入りアプリを起動すると、閲覧可能な電子雑誌が表示され、ダウンロードする事が出来る。

「時間」と「場所」に応じてコンテンツを配信できるのに加え、顧客が見ている雑誌から顧客のニーズを推測することが可能となり、より効果的な購買促進の動機付けが可能となる。例えば、ホテルのロビー内で受付を待っている顧客が、アプリを通してホテル周辺のグルメ雑誌をダウンロードして閲覧している際に、レストランの割引クーポンを配信する等といった事が出来る。但し、顧客がアプリを対象範囲内で起動するという手間が発生する為、起動回数は自ずと少なくなることが懸念される。

 

③店舗回遊・販促ソリューション「スマホで宝探し!!」

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スマホで宝探し!!は顧客の店舗内回遊を促進するソリューションである。NFC機能搭載スマートフォンを専用リーダーにかざすとゲームがスタートする。店舗内には宝箱が数箇所設置されており、スマートフォンをかざすと当たり・外れの判定が自動的に行なわれ、当たりの場合はクーポン等が表示される。スタンプラリーの要素もあり、全ての宝箱を見つけるとボードにスタンプが押されてカードが完成するなど、顧客が楽しみながら店舗回遊できる仕組みとなっている。但し、こちらもDNPチェックマガジンと同様にNFC機能搭載スマートフォンに限定されるため、顧客にとっては「起動する」手間を避けることは難しい。そのため、顧客にどれだけ満足度の高いサービスを提供出来るかが鍵となる。

バーチャル試着システム「UNIQLO COLOR MAGIC」

株式会社ユニクロはアメリカ西海岸初となるサンフランシスコ出店に際して、「全く新しい顧客体験」を提供できる施策を考えていた。そこで白羽の矢が立ったのが、数々のオムニチャネル施策を支援してきたDNPだ。様々な検討を重ねた結果DNPは、顧客は自分に似合うと思っている色以外は、初めから試着をしない傾向にある為、ユニクロの強みであるアイテムカラーの多様性が十分に活かされていない点に着目した。

UNIQLO COLOR MAGICと名付けられた同システムは、大型ディスプレイとタブレット端末カメラで構成され、正面に立った顧客が着ている対応商品を瞬時に判別し、横に設置したタブレット端末から選択した色に変更する事ができる。自分に似合う新しい色を発見するという顧客体験を提供すると同時に、ディスプレイをハーフミラー越しに設置する事で、鏡に写った顧客の服の色が突然変化するという驚きを演出した。

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DNPが未来の小売業界をオムニチャネルを通じて牽引する

小売企業はオムニチャネルの拡大に乗り出すことに加え、顧客最適化などの新しい取り組みを求め始めている。その背景には、ビッグデータ解析により以前は不可能であった個別の顧客行動分析が、大量データのマイニングによる予測技術の発達により、可能になったことがある。これにより、各社のマーケティング戦略は、従来のマス型マーケティングから個別最適化の流れへと向かっている。

DNPという巨大な印刷プラットフォームを保有する企業が「紙」から「デジタル」へのシフトを実現させつつ、Wi-Fiや画像解析のようなセンサリング関連のテクノロジーと融合することで、現在展開中のデジタルサイネージソリューションに新たな付加価値の創造を実現するだろう。DNPの強みはそうした紙媒体で培ったノウハウに加えて、長年蓄積してきた小売企業のプロモーション支援のノウハウと豊富なオムニチャネル施策の経験だと言える。新たな取り組みを続けるDNPを今後も注目していきたい。

 

まとめ

・DNPは紙媒体市場の縮小と従来からのクライアントであった小売企業のニーズの変化に合わせてオムニチャネル市場へと参入した
・DNPは「モバイルウォレット」「チェックインマガジン」等どのスマートフォンを活用した顧客向けサービスを数多く展開している。

・今後はビッグデータ解析による広告の個別最適化の流れを組み、更にオムニチャネル関連のサービスを開発していくものと考えられる。

※1 オムニチャネルとは、店舗やモバイルデバイスなど、複数ある流通・販売チャネルを統合すること。類似概念としてマルチチャネルやクロスチャネルがあるが、全てのチャネルを統合するという点においてこれら2つの概念とは異なる。

参考URL:

http://www.dnp.co.jp/cio/solutions/news/up_file/352/000023a/0000870.pdf
http://www.nytimes.com/2014/04/25/business/media/times-co-reports-increased-advertising-and-circulation-revenue.html

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