オムツでAmazonに恐れられた男の再挑戦「Amazon.com」VS 「Jet.com」

WRITER : Editorial department

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Arch for Startupより寄稿

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引用:Jet.com’s Valuation Nears $600 Million Before Launch

Marc Lore という男をご存知だろうか。5年前、ベビー用品に焦点を当てたサービス”Diapears.com”でEコマース戦線を賑わせた人物だ。その彼が今回、本気で業界の巨人、Amazonを倒すべく”Jet.com”というサービスを開始した。

サイトを公開してない2月の段階で既に2億2,000万ドルを調達し、先月には、Alibabaが1億4000万ドルをJetに出資した。これらの情報が、Jet.comに“打倒アマゾン”の秘策があることを物語っている。

今回は、その米国で話題になっている新ECサイト”jet.com”についてお伝えしたい。

最安値を謳うJet.com

Jet.comを一言で定義するならば、Costco(コストコ)に代表される会員制ディスカウントストアのWeb版である。年会費は50$。商品はAmazon同様、多岐に渡る品揃えでありながら、通常のオンラインストアの価格よりも10~15%程安い。

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引用:Geek Wire: What it’s like to shop on Jet.com, the startup that’s gunning for Amazon

「Palmolive dish soap」という洗剤を例にとると、Amazonでは3.49ドルであるのに対して、Jetの価格は2.34ドル。また、「Cottonelle Ultra Comfort Care」(12ロール入り)というトイレットペーパーはAmazonだと9.49ドル(サブスクリプション価格)であるのに対して、Jetでは6.23ドルである。

なぜ低価格が実現可能なのか

Jetのビジネスは、上記した通り年会費を消費者に課すものであり、それを収益の柱としている。Marc lore 氏によると、「年会費以外で一銭もかせぐつもりはない」とのこと。

つまり、通常のプラットフォーム会社の利益となるマージンを排除し、そのままの価格でユーザーに提供する。また、買い物客に「最短、最安」で商品を提供できる販売業者をマッチングするシステムも最安値を可能にしている。

「ユーザーがカートに何かを追加するたびに、個々の品目について最適化し価格を再設定する」複雑な計算をリアルタイムで行うものだ。ユーザーが複数の商品を買おうとすると、自動的にその両方を取り扱っている店が選ばれるようになり、まとめて送れる分送料が安くなる為、その分値段が安くなるという仕組みだ。

基本的には、年会費50ドルさえ払えば、全商品がオンラインで格安で購入できることを実現しようとしている。

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 引用:Amazon Bought This Man’s Company. Now He’s Coming for Them

上の図のようなイメージで、スパイクだけ買おうとしたら20店舗候補があるが、グローブも買うとなったら10店舗になって、バットも買うとなったら5店舗になり、その度どんどん安くなっていくといった形で、全てのコスト削減要素が全てユーザーの販売価格に反映される仕組みになっている。

Amazonをも成長させる?!

JetはAmazonを脅かす存在として現在アメリカで期待されているが、一方JetによってAmazonも成長する可能性も否定できない。冒頭で述べたDiapers.comの時がそうだったからだ。

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AmazonがDiapers.comの運営会社であるQuidsiを5億4500万ドルで買収したのは2010年11月のことだった。

2005年に発足した同サイトは、当時Amazonが取り扱っていなかった“オムツ”に焦点を当てたWebサービスと良質なカスタマーサービスで母親層の顧客を獲得、2年後には1億8000万ドル(約180億円)の売上を計上した。

同年のInc.マガジンの「今年急成長を遂げた企業」では35位にランクインするなどの実績を挙げ、「Amazonがもっとも恐れるもの、それはオムツだ」と言わしめるに至った成長株として注目された。

彼らの特筆すべき点は、芸術作品とも称された倉庫業務だ。Amazonが2009年に”Amazon Mom”でベビー用品市場に参戦した時点で、Diapers.comは既に配送センターにロボットを導入しており、数少ない人員で大量の顧客への配送を可能にする体制を整えていた。

フットボール場が20個入る巨大スベースに、53通路が最適化して配置され、約5万種類の製品を、23種類のボックスに分別している。そしてその在庫を管理するのは、人間ではなく260台の自律的に動くネットワーク型ロボットだ。中央管理されて複数で動く自動掃除機ルンバをイメージすれば分かりやすいだろう。

 

通常の倉庫業務では巨額の人件費がかかっていたが、このシステムを利用すると、ネットからの受注がダイレクトに数百台のロボットに伝えられる。それぞれは中央から情報をもらいながらも自律的に最適な軌道を選択し、他のロボットとの衝突を避けながら倉庫内を自走する。

そして注文商品の棚をピックアップすると、バッカーのもとに最適ルートを選択しながら棚を運ぶ。パッカーに商品を渡したロボットは、その時点で最適と思われる場所にその棚を置くという驚きのパラレル処理システムだ。

このロボットは、Amazonでも一部の倉庫で採用されていたが、他のアルゴリズムとも相まってDiapersの倉庫効率性は群を抜いており、Amazonはそのノウハウを手に入れたかったようだ。実際、Quidsiを買収してからAmazonの配送センター改革に火がついた。

まとめ

AmazonがCostcoのライバルに成り得ていないのには大きな理由がある。会員制ディスカウントストアで買われている商品は、価格に対してサイズが大きい、重いなど配達に向かない商品が多いからだ。だから、Amazonのヘビーユーザーでありながら、Costcoの会員にもなっている消費者は多い。

しかし、かさばる品物だけに、同じ価格だったら消費者は自宅まで配達してもらえるほうを選ぶはずだ。Diapers.comの時と同じように、それを実現するアイディアをLore氏は持っている。

果たしてAmazonはどう迎え撃つか。Webの会員制ディスカウントが成長したら、Amazonも別ブランドで参入する可能性は否定できないが、Amazon自身は即日配達など会員制ディスカウントにはない持ち味を充実させる可能性のほうが高いと思う。いずれにせよ、Jet.comの登場はEコマースの進化を加速させる刺激になるはずだ。

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tsubasa@archforstartup.com

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10904170_709467309173264_1970155646_nクラウドコンピューティング分野で世界一と言われるシアトルを拠点にクラウド関連やスタートアップ情報を発信。

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