前回第三回記事では、日本国内におけるスマートシティプロジェクトを紹介した。今回はスマートシティ連載第四回として、「スマートシティを支える企業」を紹介していきたい。
近年、自然資源に依存しない人と環境にやさしいスマートシティの建設は世界各国の重要課題として開発・研究が急がれている。2030年までに世界のスマートシティ市場は4000兆円に到達すると言われており、数多くの企業が大きな可能性に魅せられて、あるいは社会的意義に駆られて同市場に参入している。
スマートシティを作る重要な概念のなかで、今回は特に「スマートグリッド」「持続可能なエネルギー」「次世代交通システム」「水処理」「スマートホーム」の5つに着目した。今回はその各分野から注目の企業を5つ紹介する。
第1回:【連載企画】世界の最先端ICT技術が結集!未来型都市「スマートシティ」とは?
第2回:【連載企画】シンガポール・オランダ・インドの海外事例から読み解く世界のスマートシティ動向
第3回:【連載企画】日本のスマートシティプロジェクトから持続可能な未来を考える
第4回:【連載企画】最新テクノロジーで夢のスマートシティを実現する先端企業5選
スマートグリッド
電気需要が高い時間帯に使用量を減らすとインセンティブが貰える「Ohmconnect」
引用:http://cdn.pingwest.com/wp-content/uploads/2014/02/dashboard.png
環境ビジネスオンラインによると、スマートグリッドとは、電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる送電網である。
サンフランシスコに拠点を置く「Ohmconnect」は、電気需要が高い時間帯を避けて電力を使用すると、ユーザーにインセンティブが与えられる仕組みを作る事で、電力消費のピークを抑えようという試みを行っている。例えば、夏場の日中などは、冷房への需要が高まり、電気需要が集中し、街全体の電気使用量が供給量を越えてしまう可能性がある。その場合、電力会社は追加で発電所を起動して不足分を補おうとするのだが、追加で発電所を起動させると高いコストがかかる上に、大量の二酸化炭素を発生させる。そこで、消費者に対してお金を払って節電してもらう事で、発電プラントを追加起動しなくてもよい仕組みを構築する。電力会社側としても、追加で発電プラントを起動させる方がコストが高いため、喜んでユーザーに対してお金を払ってくれるという仕組みだ。「Ohmconnect」を利用することで、ユーザーは年間$50~150のお金を受け取る事ができる。
▼参照
https://www.ohmconnect.com/
持続可能なエネルギー
ソーラーパネルを無料で取り付けて電気代を下げてくれる「Solar City」
「Solar Ciry」は世界最大級の太陽光発電システム販売会社である。2015年2月にFast Companyの世界で最も革新的な企業トップ10に選ばれており、世界最強の起業家と名高いイーロン・マスクが役員を務めている。
「Solar City」は家庭・企業・政府向けにソーラーパネルを販売しているが、同社のユニークな点は家庭向けに初期費用ゼロでソーラーパネルをリースしている所だ。ソーラーパネルを借りた家は「Solar City」に対して毎月リース料金を払うのだが、太陽光発電を用いる事で、そのリース料金以上に月々の電気料金が安くなるので、消費者側からすると、実質的にノーコストで電気代が下がることになる。「Solar City」は家庭から送られて来た電気を電力会社に売る事で収益を得るというビジネスモデルだ。
従来、公的機関の完全な独占状態にあった電気市場に、家庭という新たなプレイヤーが参入することで、競争原理による価格低下やサービス向上が進むと予想されている。
次世代交通システム
世界で最もクールかつ実用的な電気自動車「Tesla Motors」
引用:http://www.teslamotors.com/
環境への負荷を減らすという観点から見て、運転時にCO2を排出しない電気自動車は、スマートシティ構想のなかでも重要な位置づけとなっている。
「Tesla Motors」は完全電気駆動の自動車を販売する会社である。こちらも、イーロン・マスクが取締役会長兼CEOを務める。「Tesla Motors」は「世界の持続可能な輸送手段へのシフトを加速する」というミッションを掲げており、世界30カ国で電気自動車の販売を行っている。
同社の販売するModel Sは5.6秒で時速100kmに達する加速能力に加えて、従来の電気自動車の課題であった航続距離を、502kmまで伸ばした事で大きな注目を集めた。燃費はトヨタのプリウスの半分であり、もちろんÇO2は一切排出しない。
水処理
水の使用量をセンサーで分析してオンラインダッシュボードで表示する「Lagoon」
「Lagoon」は水道使用量監視サービスである。専用のセンサーを水道メーターに取り付けると水道の使用量をオンラインダッシュボードで表示する事ができる。常に水の使用量を監視する事で、水漏れや無駄遣いを検出してアラートを飛ばす事ができる。こちらは家庭向けではなく、主に企業や学校を顧客としている。
スマートホーム
普通の家電をスマートデバイスに変身させる「Zuli」
スマートホームは、スマートシティ構想における最小単位という位置づけだ。各家庭がスマートホーム化することで、地域全体の電力使用も最適化される。
「Zuli」は家電のコンセントに取り付けるスマートソケットを開発している会社だ。
使い方は非常にシンプルで、コンセントにスマートソケットを設置してその上から家電のコンセントを差し込む。後は専用アプリをダウンロードすれば、遠隔で電源をオン/オフにしたり、照明の明るさを調整したりできる。また、スマートフォンのBluetoothシグナルを検出して自動で電源をオン/オフする事もできるので、電気の消し忘れを防止する事ができる。BluetoothLowEnergyを使用しているので、消費電力は非常に小さい。スマートソケットは1個$55で販売されている。
民間企業もスマートシティ推進に大きく貢献
連載第二回、第三回の国内外の事例では、主に政府主導のスマートシティプロジェクトを取り上げてきた。今回はビジネスとしてスマートシティ市場に参入している企業を取り上げた。冒頭で述べたように、今後スマートシティ市場は大きく拡大していく事が予想されている。この市場に参入するプレイヤーが増え、競争原理が働けば、より効率的で、質の高いスマートシティが実現する。
連載最終回となる次回は、国内外の未来予測を元に、「スマートシティの未来」をテーマに記事をお届けする。
第1回:【連載企画】世界の最先端ICT技術が結集!未来型都市「スマートシティ」とは?
第2回:【連載企画】シンガポール・オランダ・インドの海外事例から読み解く世界のスマートシティ動向
第3回:【連載企画】日本のスマートシティプロジェクトから持続可能な未来を考える
第4回:【連載企画】最新テクノロジーで夢のスマートシティを実現する先端企業5選