※「Arch for Startup」より寄稿
今回の記事はシアトルの大企業ではなくスタートアップに着目する。その中でも、現在世界中で注目を集めるトレンドの一つ、IoT(Internet of Things)を優れた技術と新しいアイデアで提供するスタートアップを3社まとめた。
シアトルの起業家の約75%がMicrosoftとAmazon出身という土地柄を活かしたIoTのプラットフォームのサポートをするスタートアップも一社紹介する。
1.家庭内の電力情報が一目でわかる 『ChaiEnergy』
2.教育分野でも注目のIoTデバイス 『Exo Labs』
3.NFCサービスを提供する企業へのバックエンド『GoToTags』
1. 家庭内の電力情報が一目でわかる「ChaiEnergy」
引用: ChaiEnergy
ChaiEnergyはリアルタイムで家庭内の家電製品の電力使用状況を見ることができるコンシューマー向けのアプリを提供している。上の写真二枚目にもあるように、同社の開発したChai Gatewayというデバイスで家電製品を管理しており、そこからルーターを通じてスマートフォンのアプリに情報が送られるというシステムだ。
家庭内の電力節約関連のサービスではシンガポール拠点のIntraixやSynapSenseなどがあるが、前者は企業や政府機関向けのサービスをしているから単価が高いのに対してChaiEnergyは家庭用に特化することで低単価多ユーザーを目指して差別化を図っている。
また同社は昨年12月10日にシアトルで行われたMicrosoft Ventures Home Automation Demo Dayにてピッチを披露し、American Family Venturesから最低でも約25,000ドル、日本円にして約300万円の資金を調達したといわれている。
▼参照
2. 教育分野でも注目のIoTデバイス「Exo Labs」
引用: Exo Labs
Exo Labsは自社で開発した顕微鏡を、iPadやiPhoneなどの対応デバイスにつなげるアプリを提供しているスタートアップだ。開発当初はMaher Capitalからの資金に加えてクラウドファンディングサイトのKickstarterで資金を募集し、目標額の29,000ドル(約348万円)を上回る36000ドル(約432万円)を調達した。その後シアトルのエンジェル投資家グループAlliance of Angelsから2,000,000ドル(約2億4千万円) を調達している。現在ではクラウドファンディングの資金で開発したExo Labs Model1 Cameraに加えて、Model 2を販売している。
同社が開発するデバイスとアプリは主に小学校から大学に至までの教育機関で使用されることが多い。それに加え、繊細な技術が必要とされるエンジニア業界でも使用されるなどその活用範囲は広い。
同社の強みは自社で顕微鏡を開発することにある。今までにも顕微鏡とiPadやiPhoneを連動させるアプリはあったが、iPadやiPhoneの内蔵カメラを使用していて性能に限界があった。しかし同社が開発するレンズを使うことによって従来の類似サービスでは見ることができなかった細かい範囲まで映し出すことができる。
同社が開発しているアプリExo Labs Appでは画面上で細胞のサイズを測ることができたり、画面の保存及びシェアができ、保存した画像へのメモをとることもできる。プロジェクターやディスプレイ画面とつなぐことによって大画面に映し授業で全員に見せる事も可能だ。Exo Labsは、IoT分野に加え、教育分野でも注目のスタートアップだ。
3.NFCサービスを提供する企業へのバックエンド「GoToTags」
引用: GoToTagsブログ
GoToTagsは、NFC通信(近距離無線通信)を使用してスマートフォンなどのデバイスをかざすのに必要なタグと、それらを管理するソフトウェアを開発、提供しているスタートアップだ。同社は2011年にシアトルで設立され、NFCサービスを展開する会社にサービスを提供している。同社が注目されている最大の理由はNFCサービス企業へのlow-level SDKs(ソフトウェア開発キット)の提供から、NFCタグの情報を一括管理するプラットフォームソフトウェアの提供、データの形式変換や圧縮をするエンコーダーサービスまで、NFCサービスに関わる手順を一括ですべてサポートすることにある。また、NFCサービス企業へのクラウドコンサルティング事業も展開している。
彼らのビジネスは大きく二つの部門に分かれている。一つはNFC関連商品の販売を行うオンラインストア部門(BuyNFCTags.com)、二つ目はNFCタグのサービスを行う企業向けにそれらの管理をサポートするクラウドプラットフォームやモバイルアプリ、アプリやプログラムを顧客企業のIoTデバイスに認識させる時に必要なファイル形式の変換や圧縮をするためのエンコーディングハードウェア、ソフトウェアを扱っているソフトウェア部門(GoToTags.com)である。
最近ではswivelcardというNFCやQRコード、USB機能を搭載した名刺を開発しているintelliPaperが、同社の製品を使用した事例があるなどIoT市場での存在感を示している。
▼参考記事
いかがだっただろうか。IoTという言葉を聞くと一つ目に紹介したChaiEnergyのようなコンシューマー向けのサービスが頭に浮かぶ読者が多いかもしれないが、シアトルでは少し趣向が違うサービスもある。3つ目のGoToTagsのようなBtoB(ビジネス向け)はなかなか耳にすることがないのではないだろうか。
これも、Microsoft、Amazonという大きなクラウドプラットフォームを持つ企業の影響である。長年のB向けビジネスのノウハウを持つMicrosoft出身者が起業するシアトルで世界を変える製品ができるのも時間の問題だろう。