米国では、もはや常識となっている「Predictive Analytics」
Predictive Analytics(プレディクティブ・アナリティクス)という言葉をご存知だろうか。
Predictive Analyticsとは、ビックデータ分析から未来予測まで一連の流れを行うコンピューティング技術のことだ。
ビックデータという言葉を耳にするようになってから、しばらくが経つ。IDC JAPANによれば、2017年には市場規模1000億円超と、ビックデータ市場の成長性には大きな期待がかかっている。にも関わらず、データを扱い分析できる人材の不足が長らくの課題だった。
そこで登場したのが、Predictive Analyticsだ。データサイエンティストの代わりに、同システムを用いることで、ITにうといビジネスチームでも簡単にビックデータを扱うことができるようになった。
Googleは、Predictive APIを実装し、Macy’sをはじめアメリカのトップ企業は、既にPredictive Analyticsを導入している。
引用:exelia
以下では、Predictive Analyticsにより生まれる価値を明らかにするために、アメリカの大手アパレルメーカーSTAGE STORESの事例を紹介する。
ビックデータには注目していたものの、データを扱うことができる人材の不足から、同社は2010年にビジネスアナリティクス・サービスを提供するSASのPredictive Analyticsを導入し、成果を上げてきた。
Predictive Analytics が、人間には気づかない相関性を見いだす
当初、STAGE STORESは、Predictive Analyticsを用いて、価格や商品発注、値下げ時期の「最適化」に注力しようと考えていた。
例えば、Predictive Analyticsを用いて、商品ごとの需要を分析し、需要が下がったタイミングで値下げを行えばよいのだ。
引用:IM FREE
しかし、ここで思わぬ課題となったのは人間の「勘や経験」との対立だった。それまで、一般的なアパレルメーカーでは、主に季節の変わり目に値下げを行うという慣習があった。在庫の入れ替えが起きるためだ。
そのため「値下げは季節の変わり目にするもの」という先入観から、店舗スタッフは、機械が出した提案に対して違和感を覚えていたのである。
6ヶ月にわたる取組の結果、90%の確率で人間の判断よりも人工知能の判断の方が勝っていることが分かったのだ。結果、STAGE STOREはSASのPredictive Analyticsの全店舗導入へ踏み切った。
教訓:このように人間の判断には、無意識の偏見や先入観がつきもの。しかし、Predictive Analyticsは客観的数値データに基づいた分析を行い、小売店鋪が見落としていた新たな示唆を与えてくれる。
Predictive Analyticsにより、小売店鋪は、人間の手に負えない量とスピードに対応できる
STAGE STORESの次なる取組は、服のサイズを最適化することだった。同社は、米国40州各地域に店舗を構えているが、地域ごとに服のサイズの需要が異なるという、経験に基づく仮説があった。
しかしながら、地域別に服のサイズの需要量を予測し、供給量を変える手段を持っていなかった同社は、改善策を打つことができずにいた。かつて、STORE STAGEは、人力で昨年度の売上から各地域ごとにサイズ別の供給量を推測しようと試みたものの、1000を超える商品を持つ同社には、人力が足りず不可能だった。
引用:IM FREE
この地域別に服のサイズ供給量を最適化することを可能にしたのが、Predictive Analyticsである。Predictive Analyticsは、高速で膨大な量のデータを処理できるコンピューターだ。もちろん、人力では不可能な量のビックデータ分析から予測まで、リアルタイムに実施できる。
Predictive Analyticsにより、STORE STAGESは全店舗で、在庫や売上のデータから、適切な発注が行えるようになった。この取組は同社の利益、単価の改善に貢献し、2014年の11月〜12月では、同一店舗において売上を、6.5%向上させた。
教訓:人間が処理できるデータの量や処理速度には、限界がある。これでは、せっかくの仮説も実施できずに埋もれてしまう。こうした課題を、瞬時に膨大な量のビックデータ分析を行うPredictive Analyticsが解決する。
「ビックデータ分析×未来予測」があたり前になる小売業界
引用:IM FREE
冒頭で述べたように、日本では「ビックデータ」がバズワードになる一方で、その活用には諸々課題があった。Predictive Analyticsは、こうしたビックデータに付随する課題の解決策となるだろう。
長らくオンラインのように顧客行動分析を行い、客観的数値データに基づいた分析ができなかった小売業界。ここ数年の技術進展により、一気にイノベーションが花開きはじめている。今後も目が離せない。
▼参照
Big Data In Retail: How To Win With Predictive Analytics
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