アメリカ高級ジュエリー企業に学ぶ、マイケル・ポーターの差別化戦略

WRITER : Editorial department

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Arch for Startupより寄稿

ブルー・ナイル社は、シアトルを拠点として、ダイヤモンドをオンラインで販売するE-commerceカンパニーである。同社は1999年に創業しており、ダイヤモンド小売業界において最大規模を誇る企業である。

同業界においては、ティファニーなど従来から店舗を構える小売企業、同業のオンライン小売企業、サプライヤーによる消費者へのダイレクト販売など、熾烈な競争が繰り広げられており、他社に先んじた有効なマーケティング戦略を活用しないと生き残れない状況である。

そのような環境下において、同業界のリーダーであり続ける同社のマーケティング戦略を今回は取り上げる。

 1.差別化戦略

(1)基本戦略

同社のコンセプトは、ダイヤモンドルース(研磨済みで、指輪への加工前の石)は日用品であるという考え方であり、従来の小売店より最大35%安い価格で、23万種類ものダイヤモンドをいつでもウェブサイトから注文できるようにしている。

そのため、ダーゲット顧客は、ダイヤモンドそのものを手頃な価格で素早く探したい男性顧客が中心となっており、また、同社の売上の約70%は、ダイヤモンドの指輪となっている。

(2)個別戦略

① ドロップシッピング

同社は、自ら在庫を持たず、顧客がウェブサイトから注文を行った時点で、その注文を自動的にサプライヤー転送し、サプライヤーから直接消費者に配送する「ジャスト・イン・タイム」方式を取り入れている。

なお、注文されたダイヤモンドは消費者に配送される前に、サプライヤーにて品質検査が行われている。同社と専属契約しているサプライヤーは長年同社と関係性を有する50社以上であり、顧客には注文から3~7日で商品が配送される。

この仕組みにより、中間コストが削減されることから、同社が競合企業に比べて低価格販売ができることを可能にしている。

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写真1:ダイアモンドの注文ページ(引用:同社ウェブサイト)

②カスタムメイドサービス

顧客は、同社のウェブサイトから、形、値段、カラット、カット、カラ―、透明度を選択することで、自らの要望に合うダイヤモンドを選択できるDesign-Your-Own-Engagementコーナーを設けている(写真1)。

但し、これら要素の客観的イメージは初心者には分かりにくいため、Diamond Educationコーナーで、これら要素のキーポイントを詳細に説明している(写真2)。

また、第三者機関から承認を得た、ある一定の基準(Depth % – 60.1 – 61.9%、Table % – 55.0 – 57.0%、Polish – Ideal、Symmetry – Ideal)に基づいたSignature-Ideal’ collectionをお勧めのダイヤモンドとして、奨励している。

これらの機能により、顧客は、言わばカスタムメイドのダイヤモンドを注文できるため、同社が様々な要望を持った顧客から支持される一因になっている。

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写真2:Diamond Educationコーナー(引用:同社ウェブサイト)

2.+1戦略

同社は、オンライン小売企業として、男性顧客をターゲットに、低価格で販売することを戦略の基盤としつつも、同戦略を補完する仕組みを取り入れている。

例えば、同社のウェブサイトにおいては、顧客が選択したダイヤモンドについて、詳細なデータは確認できても、現物の画像は、すべての角度から詳細に見ることができないという欠点がある。これに対して、同社は実店舗を設けることで(写真3)、実際に実物を確認してからオンラインで注文できる形態を導入している。

なお、本店舗においては、実物はショーケース的に展示され、注文は店舗に供えられたi-Padで行う形であり、その場で引き渡しを行う販売には至っていない。

しかし、同取り組みを進化させることで、今後の店舗戦略の進化とそれに伴う収益の拡大が期待できる。また、同社は、男性顧客に加えて、女性顧客を継続顧客として獲得するために、原石やシルバージュエリーのラインアップを拡大させている。

男性顧客は婚約などの晴れのイベント時に購入する傾向が高いのに対し、女性顧客は宝石を自らのために、または日常的なギフト商品として購入する傾向があることから、女性顧客を生涯顧客として獲得し、収益化基盤の安定化を図るためである。

更に、同社はBlue Nile Credit Cardを顧客囲い込みのためのツールとしている。同カードにより、顧客は年会費無料で、支払期間、支払回数、支払金額について様々なオプションが選択でき、会員独自の特典が享受できる形になっている。

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写真3:ニューヨークの Long Island’s Roosevelt Field Mall にある実店舗

3.まとめ

今回は、苛烈な競争下の中、独自の差別化戦略により生き残りを図るブルー・ナイル社を紹介した。

現在の米国のダイヤモンド小売業界は、急速な顧客嗜好の変化とテクノロジーの変化を背景として、長年に亘りブランドを築いてきた老舗企業からインターネット技術を活用した新興起業に至るまで百戦錬磨の状況(下表参照)であり、単に、競合他社と棲み分け、自らの特異とする分野で競争優位を図りさえすれば良いという考え方では生き残れないことを示唆している。

同社の取組みは、自らの足元を固めた上で、自らの弱点の補強し、競合企業に打ち勝とうとするものである。特に、オンライン販売と実店舗を連動させた取組みは、初期段階とは言え、オムニチャネル戦略に舵を切ったことを意味しており、同戦略によって、同社が今後どのように発展するのか、注目していきたいと考えている。

表1:競合する企業

種別 具体的企業例
ブランド宝石チェーン Tiffany & Co
オンライン小売企業 Amazon.com、James Allen、Brilliant Earth
デパート、大衆チェーンストア Nordstrom、Neiman Marcus
オンラインオークション企業 eBay
カタログ、TVショッピング企業 HSN、QVC
ディスカウントストア Wal-Mart、Costco Wholesale
インターネットショッピングクラブ Gilt Groupe、Rue La La
一般宝石小売店舗

 

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tsubasa@archforstartup.com

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※「Arch for Startup」より寄稿

Arch for Startup

10904170_709467309173264_1970155646_nクラウドコンピューティング分野で世界一と言われるシアトルを拠点にクラウド関連やスタートアップ情報を発信。

●HPアドレス:

http://www.archforstartup.com/

●Facebookページ:

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