2,000億円以上の価値を持つVRデバイスを欲したFacebookの野望とは

WRITER : 今井 淳南

  最新テクノロジー

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

急変するVR(バーチャル・リアリティ)市場

2014年3月、FacebookはVR(バーチャル・リアリティ)ヘッドセットを開発するOculus VRを20億ドルで買収すると発表した。Facebookはこれまでにも、写真共有サービス「instagram」やメッセージングアプリ「WhatsApp」などの多くのウェブテクノロジーに関する企業を買収してきたが、今回はハードウェアの企業を買収したということで、大きな話題となった。VRデバイスの分野では、Oculus社以外にも家庭用ゲーム機PS4を販売するソニーをはじめ、複数の企業が製品開発を進めており、今後数年で多くのVRデバイスが市場に投入されると考えられる。今回は、各社のVRデバイスの特徴を紹介しつつ、今後のVR業界の展望を考察する。

o2o_140508_image01

引用元: Oculus Rift – Wikipedia | http://en.wikipedia.org/wiki/Oculus_Rift

そもそもGoogle Glassとの違いは?

Google GlassなどのAR(拡張現実)デバイスとOculus RiftなどのVR(仮想現実)デバイスは、どちらも頭部に装着するディスプレイ(HMD: ヘッドマウントディスプレイ)であることは共通しているが、その用途は大きく違う。以下に、その特徴をまとめた。

AR(拡張現実)デバイス

主な製品: Google GlassVuzix M100Telepathy OneSony SmartEyeglass
ユーザの視界を遮らずに、片眼または透過ディスプレイに情報を提示する。
日常生活の中でメールを確認したり、地図を確認したりすることに利用できる。
単体で機能し、バッテリー内蔵。アクセサリのように軽量で、簡単に着脱可能な製品が多い。

VR(仮想現実)デバイス

主な製品: Oculus RiftSony Project MorpheusTrue Player Gear
ユーザの視界を完全に遮り、映像を表示する。
頭の動きをセンサにより感知し、まるで自分がゲームの空間の中に居るように映像が変化する。
主にパソコンやゲーム機と有線で接続し、頭部にバンドなどを用いてしっかり固定する製品が多い。

o2o_140508_image02
ARデバイスとVRデバイスの主な特徴

各社のVRデバイスの特徴

VRヘッドセットを販売または発表している3社の製品について紹介する。現時点(2014/05)では、Oculus Rift のみ開発者用モデルを購入することができる。

Oculus Rift (Oculus VR)

VRデバイスの火付け役であり、Facebookに買収されたことで、大きな注目を集める。現在、初期モデルDK1が購入可能であり、次期モデルDK2は350ドルで事前予約を受付中。(ただし、これらは開発者用モデルであり、一般消費者に向けた製品の投入は、まだ先となる。)OculusはPC向けの開発環境をいち早く提供しており、ゲームだけでなく、VRを研究やエンターテイメントに応用しようとする動きが活発となっている。特に日本ではOculus向けソフトウェアの個人開発者コミュニティが非常に盛んであり、この状況に感銘を受けたOculus VRの創業者 Palmer Luckey氏は「DK2を日本に優先出荷する」と語っている。一方、Facebookの買収に関して、一部のゲーマーコミュニティでは、プラットフォーム化を推し進めるFacebookに反発する動きがあり、世界累計3000万本以上を販売を記録したゲーム、Minecraftの開発者 Markus Persson氏はOculusへの対応を取りやめると発表した。

o2o_140508_image03

引用元: http://www.oculusvr.com/

Project Morpheus (Sony Computer Entertainment)

PlayStation4 が世界累計700万台販売を達成し、ゲーム事業の好調が続くソニーが開発中のVRヘッドセット。Games Developers Conference 2014にてプロトタイプモデルと共に発表された。発売時期および値段は未定。PS4専用デバイスであり、PS4というゲームプラットフォームにおける強みがある。また、ソニーは以前から映像視聴と3Dに特化したヘッドマウントディスプレイ(HMZシリーズ)を開発しており、映像出力に関する技術とノウハウを持っている。一方、現時点ではPS4のゲーム開発者にのみ開発環境が提供される予定で、PS4以外の利用シーンが限定されている。また、同社のHMZシリーズとの違いを市場に伝えていかなければ、社内製品同士が競合する可能性もある。ソニーは2003年に、TV用録画機を異なる事業部から同時期に投入し、お互いにシェアを食い合う事態となった。

o2o_140508_image04

引用元: http://www.scei.co.jp/corporate/release/140319.html

True Player Gear (True Player Gear)

カナダのテクノロジーベンチャー企業がKickstarter にて出資を募集予定のVRヘッドセット。発売時期および値段は未定。本体に2つのカメラを搭載し、ARデバイスとしての運用や、ヘッドセット着用中の外部の様子の確認が可能。また、家庭用ゲーム機のコントローラをエミュレート(模倣)する機能があり、PC、PS3、PS4、XboxOne、Xbox360に対応可能。これにより、VRヘッドセット(Oculus Rift やProject Morpheus)向けに開発されていないタイトルでも、気軽にVR体験が可能となるが、VRヘッドセット専用タイトルと比較して、没入感や操作性などは劣ると考えられる。True Player Gear が開発者向けに開発環境を提供するかは未定。現時点では公開されていない情報が多く、今後注目のVRヘッドセットである。

o2o_140508_image05

引用元: http://www.trueplayergear.com/

Virtuix Omni (Virtuix)

これまでに紹介してきたVRヘッドセットとは異なり、Virtuix Omni はユーザの足運びを伝えるためのハイテクルームランナーである。既にKickstarter にて資金調達に成功している。OculusなどのVRヘッドセットと一緒に使用することにより、ユーザの走る、歩く、止まる、ジャンプするといった身体の動きをゲームの中のキャラクタに伝えることができる。現在、ルームランナー型デバイスと専用のシューズのセットが499ドルで事前予約を受付中。実際の動きは、動画を確認するとわかりやすい。

今後のVRデバイス業界の展望

新しいゲームの在り方

VRデバイスの登場により、もっとも影響を受けるのがゲーム業界だ。ファミリーコンピュータの登場から、家庭用ゲーム機の性能は年々向上し、画質の向上だけでなく、情報の入出力に関する変化が起きている。入力機器においては、直感的な操作が行えるWiiリモコン (任天堂)や身体の動きを認識する多機能センサKinect (Microsoft)などが登場により 、多様化が進んでいる。そして、出力機器においても、VRヘッドセットの登場により、ゲームの空間に入り込むという新しいユーザ体験が提供できるようになった。OculusはPCゲームのユーザを対象に、ソニーはPS4のユーザを対象にVR体験を提供しようとしている。

ゲーム以外へのVR技術の応用

VRデバイスのもたらす変化はゲームだけではない。NASAはOculus Rift とKinectを利用して遠隔地のロボットを操作するシステムを開発している。遠隔地のロボットを自由に動かせるようになれば、人間が立ち入ることができない場所での救助活動や精密作業がより正確に、そして簡単に行えるようになる。また、ソニーは医療の分野において、内視鏡手術向けにヘッドマウントディスプレイを用いるシステムを提供している。

Facebook CEO ザッカーバーグの野望

Facebook CEO のMark Zuckerberg氏はOculus社を買収を発表した際に、バーチャル・リアリティの展望に関するコメントを発表している。Zuckerberg氏は、まずOculus社によるデバイス開発とVRゲーム市場の活性化を支援するとした上で、VRヘッドセットの可能性はゲーム分野に留まらないとしている。将来的にはVRデバイスによって遠隔でのスポーツ観戦や世界中の講義の視聴、医師との遠隔診療など、エンタメ、メディア、教育などの様々な分野にVR技術を利用したプラットフォームを構築するとしている。

o2o_140508_image06

引用元: https://www.facebook.com/zuck/posts/10101319050523971

現実の世界への足掛かりを20億ドルで手に入れたZuckerberg氏。ウェブの世界の巨人は、既にGoogleAmazonが進出している現実の世界に、新たなプラットフォームを作ることができるのか、今後も注目してきたい。

 

▼関連記事

VR × 妄想!現実とデジタル空間をつなぐ日本発の新技術 まとめ

自分だけの3Dドラえもんが動き出す!最新AR食品玩具 まとめ3選

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

各種お問い合わせはこちらから

  • マーケティング資料請求
  • お問い合わせ
  • 会社資料請求

あなたにオススメの記事

  • 人工知能の全貌に迫る!人工知能の活用事例10選

  • 今、数々のファッションブランドが飲食業界への参入を急ぐ理由

  • シリコンバレーの大企業が注目するグラフデータベースとは?その魅力に迫る!

  • どうなる3Dプリント業界? "幻滅期"を抜け出すカギはどこにあるのか

  • 【連載企画】今世界で注目を集める「ディープラーニング(Deep Learning)」とはなにか

  • 【連載企画】いま、ファッション業界でIT革命が起きている

  • シリコンバレーの天才達が土日も休まず働く理由

  • もし桃太郎が現代のWebマーケティングで鬼退治をしたら