どうなる3Dプリント業界? “幻滅期”を抜け出すカギはどこにあるのか

WRITER : 平野紗希

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引用:TheTelegraph

  2013年より3Dプリントはメディアなどで頻繁に取り上げられ、一気に知名度を上げた。 Gartnerのリポートによると、昨今の3Dプリントブームの盛り上げ役だった「民生用3Dプリント」と「医療機器の3Dプリント」は”過度な期待”のピーク期を迎え、さらに「民生用3Dプリント」や「製造業の3Dプリント」、そして「歯科器具の3Dプリント」はそのフェーズを過ぎ”幻滅期”に突入しているという。   km_gartner1

引用:MONOist

  今回は医療・小売・教育の3分野における3Dプリントの最新事例を紹介し、そのサービスの課題を考察する。また各分野に共通する”幻滅期”を乗り越えるためのキーワードを探すとともに、今後の展望について考えていく。

▼参照

Gartner

医療分野にイノベーションを起こそうとしている最先端技術とは?

抗菌プラスチックが可能にする99%虫歯にならない人工歯

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引用:NewScientist

3Dプリンタによる人工歯が実現間近である。既存のインプラントや差し歯は劣化が避けられず、維持費がかかっていたが、今回3Dプリンタ用に開発されたプラスチックは虫歯を引き起こすミュータンス菌を99%まで殺菌することに成功した。 現在、残された課題である強度面をカバーするための研究を行っており、実用化される日は遠くないという。

▼参照

NewScientist

睡眠障害で悩む人を救う医療機器 

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引用:Metamason

シリコンバレーで10月22日、3Dプリント事業のベンチャー企業が集まる「Inside 3D Printing Conference and Expo」が開催された。グランプリを獲得した「Metamason」は、CPAP(シーパップ)と呼ばれる鼻に装着する医療機器を3Dプリンタで製作することで、睡眠時無呼吸症候群(SAS)に対する最良の治療法を築く。  Metamasonはグランプリを受賞したことで、ベンチャーキャピタルより15,000ドルの賞金を獲得し、企業規模の拡大を進めている。Metamasonは日本国内だけでも300万人以上いると言われている、睡眠時無呼吸症候群患者の未来を変えることになるはずだ。

▼参照

Make:

欲しいものは自分で作る時代へ。

必要なのはあなたのスマホだけ!3枚の画像でできる靴のオーダーメイド

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 引用:Feetz

米国スタートアップの「Feetz」は、専用アプリのみで完結する、靴のカスタマイズ製造を行っている。 3つのアングルから撮影した画像から足の形状を特定し、ユーザーがデザインと素材を選んだのち3Dプリンタで製造され、約1週間で手元に届く。$200前後で購入可能である。  現在使用できる素材は樹脂・プラスチック系の3種類のみで、本物の靴に近い素材を開発中だという。 今後、靴の定番の素材である革や布のような素材の利用が可能になれば、足が痛くなるから履きなれた靴ばかり履いてしまうなんていう悩みは過去の話になる。また、2020年に行われる東京オリンピックで、アスリートが3Dプリンタで作られた、まるで皮膚のように足にフィットするシューズを履き、数々の記録を塗り替えるなんていう話も夢ではない。

▼参照

Feetz

世界の繊維業界を変える 裁縫の必要のない衣類

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引用:Electroloom

ナノファイバーで衣類を製作する3Dプリンタ「Electroloom」は、従来の衣服×3Dプリンタに代表されるプラスチック素材ではなく、綿やポリエステルに近い質感を出すことに成功した。 現在ナノファイバーを吹き付けることによって服を製作しているため、時間がかかること、本物の布に比べ強度が劣ることが課題であるが、それを解決することで、裁縫という概念のない全く新しい形の布としてファッション業界に広く応用されると期待される。

▼参照

Electroloom

子どもの好奇心をそのままに。3Dプリント技術で教育方法が変わる。

UV LEDダイオードで3D空間にものを描くペン

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引用:TECHINASIA

 シンガポール発UV LEDダイオードをインクとして用いた3D空間に物を描けるペン「CreoPop」が、全米1,000店舗のBestBuyで販売される。従来の3Dプリンティングペンは、プラスチックをインクとして用いて、熱で溶かして使用していたため火傷の心配があった。それに対してCreoPopは、紫外線硬化樹脂を使用しているために安全で、子どもでも扱うことができる。 3色のインクがついたスターターキットの発売価格は約$130。インクカートリッジは3色組で約$20。最新の調査によるとアメリカで1年間に子どもに買うおもちゃの平均額は約$370である。子どもへの普及を目指すには価格面での課題をクリアする必要がある。

▼参照

CreoPop

子どもの夢を叶える家庭用3Dプリンタ

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引用:KickStarter

 米国スタートアップのQubeaが販売する「Rever」は、子どもだけでおもちゃを作り遊べるよう、安全性や操作性に配慮して開発された3Dプリンタである。作るものの形は、タブレット用アプリQubea Reverで簡単にデザインできる。用意されているデザインの中から好みのものを選んだり、既存デザインや自分のアイデアを組み合わせたりすることも可能である。 本体価格は1台$219。家庭用3Dプリンタとしては買い求めやすくなったとはいえ、先ほど紹介したCreoPop同様、価格面での挑戦が続きそうだ。 またReverは製品開発は進んでいるものの資金が少なく、大量生産の体制が整っていない。現在クラウドファンディングで資金調達中で、市場に広く出回るのにはまだ時間がかかりそうだ。 価格面での課題を解決することによって、子どもたちが3Dプリント技術を使い、設計図のない自由なアイデアを形にできるはずだ。 ▼参照 KickStarter

3Dプリンタが”幻滅期”を乗り越え、”生産性の安定期”への道を切り拓くためには?

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引用:Linkedin

3Dプリントの最大のメリットは、どんな分野においてもパーソナライズされたもの生産できる点にある。医療・小売ような個人のニーズにあわせた1品生産が求められる分野は、今後3Dプリント技術の向上により発展していく分野だと言える。また3Dプリントは成長途中の子どもの創造力を養い、発想次第で十人十色の使い方ができるため、教育分野においても3Dプリンタは発展の余地がありそうだ。

現在3Dプリント業界が差し掛かっている”幻滅期”。今回紹介した、人工歯や子ども用プリンタをはじめとする事例に共通して言えることは「使用できる素材が限られていること」、「ターゲットと価格にズレがあること」である。これこそが数々の3Dプリント事業を、”過度な期待”のピーク時から”幻滅期”に一転させた原因であると言える。   素材面・価格面での課題を克服することで、パーソナライズされたものを生産できるという3Dプリント特有のメリットを生かしながら、3Dプリンタ業界は”幻滅期”を突破し”生産性の安定期”を迎え、企業と消費者の両分野での需要を高めていくと考えられる。

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