近年、静脈認証機能を搭載したATMや指紋認証機能が搭載されたiPhoneの登場など、パスワードに変わる生体認証技術の発展と応用が目覚ましい。その中で、カナダのトロント発、Bionym Inc.が発売した心拍認証リストバンド型ウェアラブルデバイスNymiは世界を一変しうる可能性を秘めている。
心拍リズムは指紋と同じように人によって全く異なる。Nymiは心電信号から心拍リズムを検知して個人を認証する仕組みを取り入れたウェアラブルデバイスである。使い方は非常にシンプルで、手首に巻いて電源を入れ、センサーのトップ部分を指で押すだけだ。振動とLEDの点灯をもって、認証された事を確認できる。これでデバイスを外すまでユーザーが認証されている状態が続く。
ジェスチャー認証を使った驚きの機能
Nymiの大きなメリットとしては、ジェスチャー認証が可能な点がある。例えば手の動きで車のカギを開けたり、TVを操作したり、PCに自動でパスワードを入力する事も出来る。
手の動きで機器を操作できると聞くとSF映画に登場するような近未来的なシーンが思い浮かぶが、具体的にどのような形で私達の生活にインパクトを与えるのだろうか。筆者は個人的に「決済」「スマートホーム」の二分野がNymiにとって成功の鍵だと予想している。理由はこの二つが、既に巨大な市場規模を形成しており、Googleを始めとする最先端テクノロジー企業が相次いで参入している分野だからだ。
決済市場は日本国内だけでも49兆円の規模を誇る。また、Square,Inc.などのクラウド決済サービスが続々と登場しており、現在最もホットな市場の一つである。決済にNymiを導入した場合、腕をかざすだけで決済が出来る。つまり、普及に成功すれば現在のクレジットカードを駆逐する可能性がある。
またスマートホーム市場は現時点で、国内だけでも1兆2000億円以上の規模を持つ。加えて、2020年には世界で18兆円を超える規模になると言われている。Googleが今年の1月に、スマート温度測定器メーカーのNest Labs, Incを32億ドルで買収したニュースは、まだ記憶に新しい。Nymiとスマート家電を連動させれば、リモコンでしていた事を、腕の振り一つで可能となる。例えば電気を点ける、空調を起動する、好みの音楽をかける、といった事だろうか。もはや、リモコンを探してあたふたする事もなくなるだろう。
利便性と安全性を兼ね備えた心拍認証技術
Nymiが使用する心拍認証技術の強みは、「利便性」と「安全性」を両立している点にある。正確な精度は公開されていないものの、1000人を対象にテストを行った結果、指紋認証より僅かに低く、顔認証より高い精度結果が報告されている(ただし、顔認証技術の精度は使用する状況により大きく変化する為、必ずしも技術的に優位とは言えない)。参考までに、国内大手メーカーのNEC社製品の顔認証精度は99.7%と発表されている。
Nymiで個人認証を行う際には「デバイス本体」「登録した心拍リズム」「登録したモバイルデバイス」の3つが必要である。これにより、単に心拍認証を行うよりも高いセキュリティ性が確保されている。一方でNymi使用のデメリットとしては、運動後などの心拍リズムが激しく変化している場合には、認証不可能な点などが挙げられる。
1台$99、低コストでの導入が可能
個人認証に用いるデバイスは、環境や用途に合わせたスペック要件により価格が大きく変わってくる為、一概には比較できない。一般的に広く普及している個人向け指紋認証機器の価格が6000円〜2.5万円(2014年4月28日:価格.com 調べ)であることを考えると、1台約1万円で導入が可能なNymiは、比較的安価に導入できるデバイスだと言える。Nymiは2014年中頃に正式リリースを予定しており、現在は特別キャンペーン期間として$79で販売されている。今後ユーザーにより、新しい使い方が展開されていく事が期待される。
まとめ
・Nymiは心拍認証によって個人を特定できるリストバンド型デバイス
・決済に活用すればクレジットカードの代わりに使用可能
・ジェスチャー認証でリモコン代わりに様々な機器(テレビ、エアコン等)を操作可能
・価格は1個$99で今ならキャンペーン価格$79で販売中
参考URL:
http://www.getnymi.com/
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/navi/03/index2.html
http://www.tomsguide.com/us/nymi-bionym-wristband,news-17484.html