予防医療が日本を救う!医療・ヘルスケア・ライフサイエンス分野の国内外事例10選

WRITER : 野田 勝

  ウェアラブル

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

近年、日本では社会の高齢化が急速に進んでいる。総人口に対して高齢者が占める割合は年々上昇しており、内閣府によると2025年には65歳以上の高齢者が全人口に占める割合は30%を越すと推測されている。

また、日本の医療費は増加の一途をたどり、国民健康保険は現在破綻の危機に直面している。厚生労働省が発表している医療費の動向によると、国民の医療費は年々増加し、2025年の国民医療費は52兆円を超える見通しである。国民健康保険制度が破綻すれば、現在のような高度な医療を安価で享受できなくなってしまう。

そうした中で、医療及びヘルスケア・ライフサイエンス分野でのイノベーションは非常に重要になってくる。

医療の現場での技術の進歩だけではなく、最近ではウェアラブルデバイスの登場で、個人が自分で生体ビッグデータを取得し、自身の健康管理に役立てることができるようになってきている。また、遺伝子解析サービスの登場で、予防医療の分野も急速に発展してきている。

今回は、医療の現場における最先端分野のテクノロジー活用から、個人のヘルスケア分野まで、医療・ヘルスケア・ライフサイエンス分野におけるテクノロジー活用事例をまとめて紹介する。

▼参照

在宅医療の体制構築に係る指針 – 厚生労働省

医療の現場でのテクノロジー活用

レントゲンやMRIなど、これまでも技術の進歩によって実際の医療の現場で医師がより正確に診断を下せるようになってきた。

最近では人工知能分野での技術の進歩が著しく、特に機械学習を用いた画像解析技術を利用して、これまで人間には発見が困難であった病気の兆候を発見したり、膨大な医療データを読み込んだ人工知能が、医師に代わって診断を下す、もしくは医師が診断を下すサポートをすることができるようになりつつある。

IBMは人工知能の活用で皮膚がんの早期発見を可能に

メラノーマ画像

画像左(a,b)がメラノーマ、画像右(c,d)は良性のシミ

引用:日本皮膚病理組織学会

米国IBM Reserchは、機械学習を用いた画像解析技術で、皮膚がんの前段階であるメラノーマを、人間よりも高い精度で発見できる技術の開発に成功している。皮膚がんは早期発見できれば完治が可能な病気であるため、95%の精度でメラノーマを識別できる当技術のインパクトは非常に大きいといえる。

▼参照

IBM News Room

東芝は画像解析技術で認知症の早期発見を可能に

s_1506_04

引用:東芝株式会社

東芝株式会社は、画像解析技術を活用して、認知症の前兆症状を従来より正確に診断する技術を開発した。

認知症の前兆症状の一つに水頭症と呼ばれる疾患がある。水頭症は脳や脊髄を保護している脳脊髄液が異常に増える疾患で、これを診断するためには、頭蓋内を循環している脳脊髄液が流れる速度を確認する必要がある。

従来は医師が目測によって診断を下していたが、今回東芝は画像解析技術を活用して脳脊髄液が流れる速度を数値化する技術の開発に成功した。

その結果、水頭症の早期発見が比較的容易になり、認知症の予防につながることが期待されている。

▼参照

東芝株式会社

スイスの研究グループが電子脊髄を開発に成功

スイスのローザンヌ連邦工科大学の研究グループは、交通事故などで脊髄を損傷した患者に移植することができる電子脊髄「eDura」の開発に成功した。「eDura」は現在モルモットを使った実験に成功しており、移植を受けたモルモットは数週間ほどで体を動かせるまでに回復した。今後は人体を使った臨床実験を行っていくとのことである。

▼参照

A tiny, flexible gold-plated device may be the key to restoring paralyzed humans’ spinal functions

アメリカの最先端オンライン健康保険

医療と健康保険は切っても切り離せない関係にある。特にアメリカは医療費が高額なことで知られており、一般の初診料は150ドルから300ドル,専門医を受診すると200ドルから500ドルにものぼるという。そこで、月額制で現物給付の医療保険をオンラインで提供するスタートアップが急成長を遂げている。

現物給付のオンライン医療保険サービス「Oscar」

「Oscar」はニューヨークを拠点としたオンラインの医療保険を提供するスタートアップである。有事の際に保険金を受け取れるだけでなく、月額料金を支払えば、診察はもちろん、検査や予防接種など各種医療サービスを追加料金なしで受けることができる。

また、24時間365日いつでも医師に電話で症状の相談ができるほか、「Oscar」を通じて行われた診察の履歴は全てオンラインで管理され、過去の病状や薬の服用履歴などを医師と円滑に共有することができる。

「Oscar」ではオンラインで診療の予約ができたり、前述のように電話で医師に体調を相談することもできるため、従来のように病院で長い列に並ぶ必要が少なくなる。

▼参照

Oscar

ウェアラブルを始めとするIoTデバイスを活用したヘルスケア

ここ数年、ウェアラブルデバイスの登場により、個人が生体ビッグデータを取得できるようになってきた。

最近ではApple社のiPhoneが、iOS8.1から「ヘルスケア」アプリを標準搭載し、サードパーティのものを含む各種ヘルスケアアプリのデータを一括管理できるようになった。

個人の生体ビッグデータをウェアラブルデバイス経由で取得し、クラウドで一括管理する流れは今後も加速していくはずである。

今後は、ユーザーが独自に収集した生体ビッグデータを、医師が診断を下す根拠として活用したり、そうした医療データをオンラインで医師と共有し、通院することなく診察を受けられるようなサービスが登場してくるはずだ。

スマートウォッチ型のウェアラブルデバイスで心拍数や消費カロリーを計測

s_スクリーンショット 2015-10-01 6.13.01

引用:Apple

AppleWatchに代表されるような手首に装着するタイプのウェアラブルデバイスは、主に心拍数や消費カロリーなどを計測してくれる。心拍数や血圧などの生体ビッグデータを取得するためには、ユーザーが常時デバイスを装着していることが望ましいため、比較的着脱の少ない時計型のウェアラブルデバイスは最適である。

しかし、The Wall Street Journalは、バンドの締め付け具合や、ユーザーの皮膚水分量の変化などによって、生体データ取得の精度にばらつきが出る点を課題として指摘しているほか、現状ではスマートウォッチの電池は長くて数日程度しか持たず、充電のためにデバイスを外してしまう間はデータが取得できないなど、課題は依然として残っている。

▼参照

The Wall Street Journal

皮膚に直接貼る電子皮膚で生体ビッグデータを正確に取得

s_スクリーンショット 2015-10-01 6.14.17

引用:MC10

米国スタートアップのMC10が開発した「BioStamp」は、肌に直接貼るタイプのウェアラブルセンサーである。「BioStamp」は、心拍数のような基本的な生体データだけでなく、心電図・脳波・筋電図・体温といった専門性の高いデータを各種センサーにより測定し、クラウドに送信してデータを蓄積することができる。

現在はコスト面で課題があるため、ユーザーが気軽に生体ビッグデータを取得するというよりは、医療用に必要に応じて使用することが想定されているが、将来的にはまるでコンタクトをつけるような感覚で、個人が専門性の高い医療データを取得し、前述のように医師の診断の根拠として活用することも考えられる。

▼参照

MC10

ユーザーが独自に生体データを取得し医師と共有

s_スクリーンショット 2015-10-01 6.15.28

引用:CliniCloud

米国スタートアップScanaduは、体温、血圧、心拍数を計測できる小型のボディスキャナを開発している。Scanaduが画期的なのは、取得したデータをクラウドで管理して蓄積するだけではなく、医師と共有して診察に使用することを想定している点である。

同じく米国スタートアップのCliniCloudは、スマートフォンにつなげて使用するスマート聴診器を開発しており、聴診器を通じて得た生体データをクラウドで管理し、必要に応じてビデオ通話の形式で、取得データに基づいて医師の診察を受けることもできる。

近い将来、このようにユーザーが独自に収集した生体データを医療に活用するようになっていく。その結果、体調が悪い中病院で診察の列に並ぶことが少なくなるだけでなく、ユーザーは日々計測するデータに基づいて、ちょっとした体の異変に気付きやすくなり、オンラインで気軽に医師に相談することができるようになる。

そのためには、ユーザーが日常的に使用するようなデバイスでも、専門の医療機器と遜色ないような高い精度を備えている必要がある。

▼参照

scanadu.com

CliniCloud

遺伝子解析で潜在的な病気のリスクを検出

近年、生まれ持った遺伝子によって、かかりやすい病気などの傾向があることが明らかになってきた。そんな中、国内外で遺伝子情報を解析し、予防医療に役立てるサービスを提供する企業が出てきている。2018年の国内遺伝子解析サービスの市場規模は286億円にものぼる見通しで、いま遺伝子解析は注目の分野である。

DeNAは東大医科学研究所と共同で遺伝子解析サービスMYCODEを提供

s_スクリーンショット 2015-10-01 6.17.29

引用:MYCODE

株式会社DeNAライフサイエンスは、所定の容器に被験者の唾液を入れて返送するだけで、生活習慣病やがんのリスク、その他各種体質に関する情報をフィードバックするサービス「MYCODE」を提供している。

「MYCODE」は東京大学医科学研究所とDeNAライフサイエンスの共同研究の開発成果を「社会実装」したサービスであり、サービスの提供においてはELSI*と科学的根拠に基づくものであることに最新の注意を払っている。

合計280項目もの項目に関する検査結果が分かるだけではなく、検査結果に基づいて予防に繋がる生活習慣改善のアドバイスを、専門家監修のもと受けることができる。

「MYCODE」は病気の治療ではなく、将来的な発病リスクの軽減という視点から健康管理を支援するサービスである。

*ELSI=Ethical, Legal, Social Issue – 倫理的・法的・社会的課題。 DeNAライフサイエンスは「個人遺伝情報保護ガイドライン」(経済産業省)など、国の定めるガイドラインの遵守、同社倫理審査員会での審議など、ELSIへの取り組みを行っている。

▼参照

MYCODE

ヤフーは予防医療で日本の医療費増大を食い止めることをミッションに掲げる

s_スクリーンショット 2015-10-01 6.18.35

引用:HealthDataLab

ヤフー株式会社は、被験者の唾液を分析して、健康リスクや体質、病気予防に関するアドバイスをフィードバックする遺伝子解析キット「HealthDataLab」を提供している。

遺伝子解析結果の解釈に関しては、信憑性のある論文を根拠とするなど一定の基準を設けている。

「HealthDataLab」は、合計約290項目に関する検査結果と、結果に基づいた効果的な病気予防法を提案する。

ヤフーは、遺伝子解析による予防医療で、日本の医療費増大を食い止めるというミッションを掲げている。

▼参照

HealthDataLab

治療する医療から予防する医療への転換

技術の進歩により、医療レベルが向上していくだけではなく、最近では一般の人がウェアラブルデバイスや遺伝子解析サービスを活用して自分の身体について深く知る事ができるようになりつつある。その結果、今後は”治療”する医療から”予防”する医療へと医療のあり方がシフトしていく。

予防医療によって主に以下2つの利点が生まれる。

1つ目は介護人材の削減である。高齢化社会の日本では、平均寿命は年々伸び続けているものの、介護が必要となる”健康寿命”と平均寿命の差は開く一方である。その結果、高齢者を介護する人材が大量に必要となってしまう。

少子化により、高齢者を支える若年層が減少し続ける今の日本において、高齢者の要介護状態を防ぐという意味でも、健康寿命の短縮に繋がる病気の予防医療は非常に重要である。

2つ目は既に述べたとおり医療費削減である。前述のとおり、日本の医療費は増加の一途をたどり、国民健康保険制度は崩壊の危機に直面している。予防医療が進展することで、医療費の増大に歯止めをかけることが期待されている。
今後もウェアラブルや遺伝子解析を活用した予防医療の分野には要注目である。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

各種お問い合わせはこちらから

  • マーケティング資料請求
  • お問い合わせ
  • 会社資料請求

あなたにオススメの記事

  • 人工知能の全貌に迫る!人工知能の活用事例10選

  • 今、数々のファッションブランドが飲食業界への参入を急ぐ理由

  • シリコンバレーの大企業が注目するグラフデータベースとは?その魅力に迫る!

  • どうなる3Dプリント業界? "幻滅期"を抜け出すカギはどこにあるのか

  • 【連載企画】今世界で注目を集める「ディープラーニング(Deep Learning)」とはなにか

  • 【連載企画】いま、ファッション業界でIT革命が起きている

  • シリコンバレーの天才達が土日も休まず働く理由

  • もし桃太郎が現代のWebマーケティングで鬼退治をしたら