近年、農業にITを活用するスマート農業が拡大しつつある。今年4月に矢野経済研究所が発表した調査結果によると、2020年までに日本におけるスマート農業の市場は308億4900万円にまで拡大する見込みだという。
また、農林水産省が中心となって、「スマート農業の実現に向けた研究会」が設置されるなど、官民一体となってスマート農業は推進されている。
そこで今回は、国内のスマート農業の取り組みを紹介する。
▼参照
分野別スマート農業ソリューション
スマート農業と一口に言っても、その種類は多岐にわたる。スマート農業と呼ばれる分野の主なソリューションには以下の様なものがある。
栽培支援ソリューション
農業クラウドと呼ばれるシステムは、栽培支援ソリューションの代表的なものである。農業クラウドには、センサーデバイスを農地に設置してデータを収集し、温度や湿度、土に含まれる養分の量などをデータ化して管理し、生産に役立てるサービスなどがあり、従来は長年の経験や勘に頼って行ってきた部分をデータ化することで、農作業を効率化するだけでなく、経験のない人でも比較的簡単に農業に参入しやすくなるというメリットがある。
販売支援ソリューション
農作物の収穫予測及び需要予測を行い、農作物の安定供給につなげることで、農家の収益改善を支援する。
例えば、気象情報を分析して、その年の収穫量を予測したり、農作物の流通状況を可視化し、農作物の価値が高くなるタイミングで出荷できるようになるシステムなどがある。
経営支援ソリューション
経営支援のソリューションは、納税申告業務の効率化など、会計に関する業務支援を行う。
日本の農業法人は全国に1万5千件あり、その多くは零細企業である。従って、従来は大規模な会計システムを導入する体力もなかったため、農業のIT化が遅れる要因にもなっていた。
しかし、クラウド化の流れの中でソフトウェアのサービス化(SaaS)が進み、使用するデータ量や規模に応じてサービスを提供する形ができてきている。
精密農業
前述の栽培支援ソリューションの農業クラウドと一部重なる部分もあるが、農地の土壌状況をセンサリングデバイスを使って正確に把握し、無駄なく農地の農地を最大限に発揮するサービスが登場してきている。
また、過去の作物収穫量を各農地ごとにデータとして蓄積し、資材の投入量を最適化したり、収穫量の少ない農地に関しては、土壌状況をデータで確認し、農地改善をはかるといったアプローチができるようになる。
サービスのクラウド化で零細農家にもIT化のチャンスが到来
従来のITシステムは高価なものが多く、大掛かりなシステムを導入できるのは一部の大規模農家にとどまり、利益率が低い農業とITは相性が良いとは言えなかった。
しかし近年、クラウド化の流れの中でソフトウェアのサービス化が進み、高価なシステムの購入ではなく、システムの使用料として、サービスを使った分だけ料金が発生するようなビジネスモデルにシフトしてきている。
その結果、収入が少ない零細農家でもIT技術を取り入れる事ができるようになりつつあり、農業市場全体のスマート化が進みつつある。
農業への就業人口が減少傾向にある中で、効率的な生産は必要不可欠であるだけに、今後のスマート農業の広がりに期待が高まる。
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