※Arch for Startupより寄稿
アメリカで拡大しているモバイルペイメントの波
Appleが提供するApple Payが米国内で10月20日より開始され、開始からわずか72時間で早くも100万ものユーザーを得て、アメリカで最大のモバイルペイメントとなった。
Macy’s やMcDonald’sといった多くの大手小売り業者は、指紋認証だけで支払いができる機能を加える事で、従来のNFCよりも私的で安全となったApple Payの使用を開始した。また、それに対抗する形で大手小売業者Target corporationや世界最大のスーパーマーケットチェーンWalmartなどで組織されたMerchant Custom Exchange (MCX)が提供するモバイルペイメントアプリCURRENTCも多くの店で使用できるように来年の導入を目指しテストを繰り返している。
そんな中、世界規模で展開するコーヒーチェーン店Starbucksもまた独自のモバイルペイメントシステムを展開している。Starbucks CEOは
「我々はモバイルテクノロジーの発展のために長年投資を行ってきた。2013年には全米のモバイルペイメント取引の90%がスターバックスの店舗で行われていた。わが社は世界で唯一顧客の決済方法をモバイルに変えた企業である。今後大きく成長するこの分野においてスターバックスは様々な企業とパートナーシップを持ち、絶大な影響力をもつ企業になっていくだろう。」
と述べモバイルペイメントへの意欲的な姿勢をみせている。
また9月のはじめにはNordstrom(アメリカのシアトルに本部を置く大型チェーンデパート) がAppleとApple Pay導入に向けての会談を行ったという噂が立つなど今、アメリカではモバイルペイメント技術に注目が集まっている。
おサイフケータイなどのモバイル端末による電子マネーの普及率が30%前後の日本では、NFCリーダーを必要とするApple Payなどのモバイルペイメントの普及にはまだ時間がかかると思われる。
モバイルペイメントのシアトル注目企業
人口の80%が月に一度はショッピングの支払い時にスマートフォンを用いているというアメリカ。ここ数年でモバイルペイメントの波は勢いを増していき、当然ながら、シアトルにもその波は押し寄せている。
ここではシアトルに存在するモバイルペイメント関連のスタートアップを2社紹介したい。
募金や寄付までもスマートフォンで可能にする「Pushpay」
引用:Pushpay
「Pushpay」は2011年にシアトル近郊に支部を置くスタートアップだ。提供しているアプリは、スマートフォンに自分のクレジットカードを登録することで、その端末での支払いを可能にするものである。
このサービスの大きな特徴は2つある。1つ目は、店舗での支払いだけでなく、ユニセフなどへの募金や教会への寄付もこのアプリで可能にしていること。2つ目は、位置情報を用いることで、自分の今いる地点からこのアプリを使用可能な店舗を探しだしてくれることだ。このサービスを使えるはまだ少ないが、今後増えていき多くの人に使用されることが期待できよう。
海外への送金サービスを格安で提供する「Remitly」
引用:Remitly
「Remitly」は2011年にシアトルで創立されたスタートアップだ。提供している主なサービスは、アメリカから海外(主にフィリピン)への送金をアプリ一つで可能にしたサービスである。今のところアメリカ全50州中の32州での認可を受けている。
このサービスの特徴は、為替レートや手続費用などを低価格で提供しており、他の送金サービスと比較してもサービスの低価格という優位性を獲得している。また、このサービス上で年間1億ドル (120億円)もの金銭のやり取りが行われており、急成長を遂げている。今年に入ってから550万ドル (約6.5億円)の出資を、アマゾン創設者であるベゾス氏を含む投資家から受けており、アメリカの中でも注目すべきサービスである。
モバイルペイメントの未来
引用:Who Is Leading The Digital Mobile Payment Influence Battle?
では、このモバイルペイメント技術のリープが今後どのように普及し、私たちの生活に変化をもたらすのだろうか。
Apple Pay導入から3週間、アメリカ大手スーパーのWhole Foods ではiPhone経由の購入が15万件、大手薬局チェーンWalgreensではNFCシステムの利用が2倍と急激にモバイルペイメントが普及していることが窺える。
また、アップルという巨大ブランドがモバイルペイメントを導入したことで、各企業思い切った戦略を打ち出すことに必死だ。新しいモバイル決済の躍進はアップルブランドにより大きく促進され、小売業者と消費者もこの簡単で安全な決済方法を気に入り始めている。
また、今後スマートフォンに限らず、Apple Watchのような高機能ポータブルデバイスの開発に力を入れることが予想され、決済機能もますます充実することが予想されるだろう。
※Arch for Startupより寄稿
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