大学発ベンチャー「スパイバー」に見る、日本のイノベーションの未来

WRITER : 楠瀬 朝子

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引用:Pinterest

今、日本から世界の産業構造を大きく変える可能性を持ったイノベーションが生まれようとしている。

本稿では、世界初の人工クモの糸「QMONOS」を開発したSpiber.incを紹介し、これからの日本に求められるイノベーション構造について述べたい。

スパイバー株式会社とは

設立年月:2007年9月

資本金:25億3458万円

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引用:gizmag

スパイバー株式会社(以下、スパイバー)は、世界初の人工クモの糸「QMONOS」を発明した大学発ベンチャーだ。現在は、山形県鶴巻市、経済産業省などとタッグを組み、ALL JAPANで技術開発・ビジネス化に取り組んでいる。

2015年1月22日には、経済産業省が主催する日本ベンチャー大賞において、地域活性化賞を受賞した。そして、今年5月には、生産量を月産1トンまでスケールアップさせるためのパイロットラインを稼働開始。実用化間近の注目テクノロジーで世界を変えようとしている。

強さと伸縮性をかね備えた夢の繊維、人工クモの糸「QMONOS」 

この人工クモの糸QMONOS。一体何が「すごい」のか。それは強さ、伸縮性、などの全てを兼ね備えた夢の繊維を人工的に作り出したことにある。

QMONOSは、鉄鋼の4倍の強度を持ちながら、ナイロンを上回る伸縮性も兼ね備え、300度を超える耐熱性を持つ。炭素繊維や合成ゴムといった化学繊維では、実現できない性質だ。これまでの化学繊維では、強い糸は伸縮性にかけ、伸縮性のある糸は弱いというように、あちらを立てれば、こちらが立たずの関係にあったのである。

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引用:examiner.com

クモの糸が、本来相反するはずの性質を兼ね備えた夢の繊維であることは、古くから知られていた。そして、1990年代頃からは、人工でクモの糸を生産する試みも行われてきた。

しかし、クモを家畜化する、他の生物にクモの糸を生産させるなど、様々なアイディアが提案されては、失敗に終わってきた。生産コストや技術的な問題が立ちはだかったためだ。

この「クモの糸を人工的に生産する」という課題に、スバイバーはブレイクスルーを起こしたのである。バイオインフォマティクスを駆使することによって、クモの糸の遺伝子を抽出し、バクテリアに組み込むというアイディアで、人工クモの糸の生産を可能にしたのだ。

人工クモの糸が人類の資源枯渇問題を解決する?!

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引用:arketsmedia

人工クモの糸「QMONOS」によって、枯渇資源といわれる石油に対する依存脱却が期待されている。私たちの生活は、ガソリンにはじまり、プラスチックや衣類など、石油に頼りきりだ。

また、経産省資源エネルギー庁によれば、日本の一次エネルギーの5割を石油が占めており、しかもほとんどが海外輸入によるものであるという。

「QMONOS」は、繊維のほか、フィルム、スポンジ、ゲル、パウダー、ナノファイバーなど、様々な形態での供給が可能だ。そのため、将来的には、ぶつかってもケガをしない車や衣類などの製造業や手術用の縫合糸、人工血管や人工靱帯といった再生医療など、様々な分野への応用可能生を秘めている。

つまり、これまで石油だけに頼っていた資源を、「QMONOS」によって、代替えできる可能性があるということだ。

イノベーションのエコシステムづくりが課題となる日本

「日本ではイノベーションが生まれにくい」と、しばしば指摘されることがある。だが、内閣府が「イノベーション25」という公約を掲げているように、今後人口減少が進み、労働者の母数が減少していく日本では、再生医療技術やロボット技術、人工知能技術など、あらゆる分野において生産性を向上させるためのイノベーションが求められている。

そのためには、国内の大学で進められている基礎研究から、ビジネスを生み出すエコシステムづくりが必要だ。基礎研究を進めることそれ自体が、自己目的化してしまっては、もったいない。

大学で培われた知恵を、社会で利用可能なビジネスに結びつけることで、初めて生活者に大きなインパクトをもたらすようなイノベーションを生むことができるのだ。

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引用:daily reckoning

新規事業創出を目的に大学と企業が共同研究を行う「産学連携」や、大学研究室が研究成果を技術シーズとして事業を創る「大学発ベンチャー」など、日本国内でも基礎研究から、ビジネスを生み出そうとする動きがないわけではない。

しかし、2014年に実施された文部科学省による産学連携等実施状況に関する調査をみると、あまりその動きは活発でないようにも見受けられる。

例えば、大学発ベンチャーの設立数が、2005年の252件から2014年には52件と、約10年のうちに5分の1にまで下がっている。また、産学間での共同研究にかける研究費が300万円を下回る規模の研究が、8割を占める。

今回紹介したスパイバーは、大学の基礎研究をビジネスに結びつけた格好の事例といえるだろう。スパイバーは、慶應義塾大学先端生命科学研究所で行われていた研究を基にして、世界を変えるようなイノベーションをもたらす可能性を秘めたQMONOSを生み出した。

先に述べた国内状況からすれば、スパイバーのようなケースがでてきたことは、喜ぶべきことだ。こうした事例が、もっと増えることで、日本国内から、数々のイノベーションが生まれ、世界を変えてゆく未来に期待したい。

▼参照

2015/1/4 山形新聞 Yamagata News Online

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