人工知能が企業の人材採用活動の一役を担う
企業は常に優秀な人材を求めている。しかし、いざ採用面接をするとなっても、相手が”優秀な人材”かどうかを判断することは難しい。人が人を評価する時、どうしても無意識な偏見や個人的な好き嫌いが評価基準に入ってしまうからだ。人材採用において適切なマッチングがされないことは、採用する企業にとっても、職を求める個人にとっても不幸である。
そんな人材採用の課題に対し、人工知能の活用が期待されている。以下、事例を紹介しながら、人工知能が採用現場で使われることにより、どんな未来が訪れるかを考察する。
海外事例
ーGild:エンジニアスキルをスコア化する(アメリカ)
引用:人工知能×HR
サンフランシスコ発のスタートアップGildは、企業のエンジニア採用向けに作られたプラットフォームだ。約80以上のオープンソースやサイト内のQ&A、職歴、学歴などをデータ解析し、エンジニアのスキルをスコア化する。また、2014年10月には、転職に消極的な人が、積極的になるタイミングを予測する新機能も追加された。このサービスにより、企業は即戦力となる人材を適切に採用することができる。
▼参照
ーVisier:従業員データを統合し、雇用の未来予測をする(カナダ)
引用:人工知能×HR
YAHOO!やNISSANでの導入実績もあるVisierは、全従業員データの統合管理を行い、統合したデータから分析・未来予測を行うサービスだ。従業員の能力開発や採用の効率化、多様性の度合いなどのカテゴリー別に、数百を超える従業員に関する疑問への分析結果を提供する。
例えば、優秀な人材維持のカテゴリーでは、離職とパフォーマンスの関連性や、どのような人柄が離職に影響しやすいかといった洞察を得ることができる。Visierにより、企業は客観的な事実に基づいた人材戦略をとることが可能になる。
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ーEntelo:ソーシャルデータを分析し、マイノリティー層から優秀な人材を発見する(アメリカ)
引用:人工知能×HR
Enteloは、企業が必要とする能力を持った人材を検索し、アプローチできる採用サービスだ。中でも注目を集めているサービスは、「Entelo Diversity」である。「Entelo Diversity」は、豊富なソーシャルデータを用い、特定の性別や人種層の中から、採用候補者のスキルや仕事の質を分析するサービス。同サービスにより、多様性のあるチームづくりを求める企業は、最適な人材を見つけることができる。また、過小評価されやすい傾向にある性別や人種の人々にとっても、平等な採用を可能にする。
▼参照
国内でも始まっているHR×Techの動き
引用:人材採用×HR
以上では海外の事例を紹介したが、日本国内でも少しずつ人工知能を人材採用に取り入れる動きは始まっている。
2014年には、サイバーエージェント・ベンチャーズとANRIから、総額7500万円の資金調達を行ったHatchが、人材採用サービス「Talentio」をスタートさせた。サービスの詳細について、同社webサイトで明確に示されていないものの、現在一部企業限定で提供されているとの報道もある。今後の動きにも目が離せない。
人工知能による客観的データ分析が、人間の主観による採用を補完する
引用:人工知能×HR
人工知能がHRに活用されることによる大きな変化は、客観的データに基づいた採用が可能になる点だ。採用候補者がどんな職についたか、どんな成果を出してきたかということは、これまで履歴書や面接を通じてしか知ることができなかった。
しかし、いまや人の能力やスキルを示す情報は、SNSをはじめ豊富にある。豊富なデータを統合・分析し、客観的データとして可視化することで、それが採用時の大きな根拠になることは間違いないだろう。
このことは、キャリアステップのために次々と転職を求める人や、性別や人種などの理由から採用の機会が少ない人にとって、メリットとなるかもしれない。なぜなら、その人の過去の実績が人の主観ではなく、客観的データとして使用されるため、より平等な採用が可能になるからだ。
冒頭で述べたように、人が人を選ぶ以上、どこかで無意識の先入観が働くものだ。その課題を補完する役割として、人工知能により得られる客観的データが重要な役割を担うかもしれない。
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