シリコンバレーは現在、地球上で最もクリエイティブな発明が行われている場所であると行っても過言ではない。1970年頃に集積回路チップの生産工場が設立されたことをきっかけに、現在ではIT企業の集積地となっている。
同時に、シリコンバレーは世界で最も優秀なエンジニアが集う場所でもあり、独自のカルチャーを形成している。その一つに徹底したハードワークがある。彼らは昼夜土日を問わず、没頭して働くのだ。類まれなる才能を持つ彼らは、なぜそこまで一生懸命に働くのだろうか?今回はその謎に迫ってみたい。
天才を突き動かすのは金銭と成功以外のモチベーション
シリコンバレーではしばしば長時間労働が問題になる。しかし、シリコンバレーに集うエンジニアの多くは世界的に見ても優秀な人材である。資本主義の原理に則れば、彼らはより条件のよい職場に転職していきそうなものだが、何故そうしないのだろうか?readwrite紙のライター、GREGORY FERENSTEIN氏はその謎に一つの答えを提示してる。
「シリコンバレーを成り立たせているものは、週末だというのに高校でコンピュータを作り、コードを書き、そして周りの人たちからほとんど理解されていないギーク達だ。ある種の人たちにとって、テクノロジーは安息を得る、また情熱を燃やす場所であり、今では成人して我々の未来の為にコードを書いている彼らの多くにも、それは変わらず在り続けている。」
エンジニア達にとっては仕事は彼らの楽しみや趣味と被るものであるため、それらに昼夜問わず熱中することができる。それが周りから見て長時間労働に見えているだけかもしれない。
未来の仕事に求められること
シリコンバレーの天才たちのこの話は、我々一般人にとってどのような意味を持つのだろうか?おそらくは世界的に同じような形に収束していく。そう言える根拠の1つはAIの登場だ。オックスフォード大学の研究によると、AIの登場により10〜20年以内に米国の労働者が担う仕事の47%が自動化され、AIに代替されると言われている。
具体的には下記の仕事が残る・残らないと言われている。
引用:The Future of Employment: How Susceptible are Jobs to Computerization (2013年9月)
今後、消える・消えない仕事に関しては諸説あるものの、共通しているのは定型業務を扱う(ホワイトカラーとブルーカラーの中間にあるような)中度知識労働者の職はどんどん減っていき、反対に高度なコミュニケーション、人間の感性や発想を必要とする仕事は消えずに残ると言われている点だ。
そして、人間の感性や発想が最も発揮されるのは、金銭や成功のために与えられた仕事をこなす時ではなく、自らの興味・関心・好奇心に従って新しいことに取り組む時なのだ。(*1)
受動的な長時間労働からの脱却が求められる
シリコンバレーで働く天才達は自らの興味・関心に従って仕事に取り組んだ結果、長時間労働をしているように見えていると上で述べた。日本も諸外国と比べて労働時間が長いことで有名だが、連合総合研究所の調査によると、長時間労働の理由として最も多かったのは「仕事量が多いから」:51%、 「突発的な仕事があるから」:40.7%、「納期にゆとりがないから」:16.3% と”仕方なく”といった理由が多かった。どちらの働き方が未来の世界でより必要とされるかは、前述したとおりである。
もちろん、これは一般論であり、一概に答えがでるものではない。しかし、人工知能を始めとしたテクノロジーの発達が定型業務を自動化する方向に推し進めているのは事実であり、遠い未来ではなくほんの10、20年後の話なのだ。我々も、長期的なビジョンに立って自らの仕事に対するあり方を変える必要に迫られているのである。
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*1:異論を唱える人もいるかもしれないが、あくまで筆者個人の意見なのでご容赦願いたい