Ethical Approach To AI が発足。メディア関係者に委員が抱負を語りました|株式会社ABEJA
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2019.08.21

Ethical Approach To AI が発足。メディア関係者に委員が抱負を語りました




趣旨を説明する岡田陽介社長=ABEJA本社



政府や企業の間で、倫理的な側面からAIの使い方を話し合う動きが広がっています。 ディープラーニングを手がけるABEJAも、自社の案件に関し、倫理的観点で検証し、見解を示す組織が必要と判断。AIに関する課題について、外部の有識者が倫理、法務的観点から討議する委員会「Ethical Approach to AI」(EAA)を設立しました。7月30日に第1回会合を開くとともに、代表取締役社長CEOの岡田陽介と委員がメディア関係者に発足にあたっての抱負を語りました。その様子をご紹介します。



可能な限りバイアスをかけず、多面的に解釈しながら「AIと倫理」を討議したい



岡田陽介代表取締役社長CEO



このたび、EAAを発足させたのは「AIと倫理」は企業の経営戦略に直結する問題だと認識しているからです。



起業から7年間、「豊かな世界を実装する」というビジョンのもと、AIビジネスに取り組んできました。その過程でかなり多くの倫理的な課題点に直面しました。たとえば、小売業界に対してAIプラットフォームを提供する際、最大の課題となるのはカメラ画像の利用範囲です。非常に難しい論点ですが、経産省と総務省が共同で運営している「カメラ画像利活用サブワーキンググループ」や「AI・データ規約ガイドライン検討会」などに参加して、実際の現場で起きている問題を伝えてきました。さらに、我々のようなAIベンダーをはじめ、IT企業や消費者、弁護士などさまざまな業界の有識者の方々と一緒に、問題の最適解を見出すために議論してきました。



しかし、こうした委員会で個別案件について具体的に伝えるのは、クライアントとの秘密保持契約の観点から非常に難しい。一方で、個別案件を当社のメンバーだけで議論していても公平性が担保できません。そこで、当社内に、外部のさまざまな立場の有識者をメンバーにした委員会を立ち上げることが非常に重要だと痛感したのです。



EAAには、AI技術の専門家である松原仁先生、AIの倫理やガバナンスの専門家・江間有沙先生、AIの法的解釈の専門家である三部裕幸弁護士、グローバルにインパクトを出していくという意味で西村カリン先生、哲学やリベラルに関して優れた知見をもつ山口周先生に参加していただきました。おかげさまであらゆる領域をカバーできるドリームチームになったと自負しています。



今後、膨大な知見を元に、委員の皆さんとより活発に「AIと倫理」の問題を討議し、将来的には独自のガイドラインを作る予定です。その際に最も重要なのは、可能な限りバイアスをかけず、多面的に解釈すること。また、EAAで議論した内容は可能な限り公開していきたいと思っています。



【委員のあいさつ】


松原仁委員=通商産業省工業技術院電子技術総合研究所(現産業技術総合研究所)を経て、2000年から公立はこだて未来大学教授。同大副理事長。元人工知能学会会長。ABEJA技術顧問。専門は、人工知能、 ゲーム情報学、公共交通、観光情報学。近著に「AIに心は宿るのか」。



今回の第3次ブームでようやくAIが実社会にリーチしたと実感しています。少なくとも、AIにまつわる倫理問題が生じるレベルにまでは進歩したと捉えています。ABEJAのようなAIスタートアップの代表的企業がAIと倫理の問題を正面から取り上げたのは非常に画期的なこと。代表の岡田氏が言ったように、AIと倫理というテーマは企業の経営に直結する問題です。これを社会に対して発信していただいたことは非常に有益なことなので、EAAが実際に問題解決に資するような実践的な委員会になるよう、できる範囲で協力したいと思っています。



江間有沙委員=東京大学未来ビジョン研究センター特任講師/国立研究開発法人理化学研究所革新知能統合研究センター客員研究員。日本ディープラーニング協会理事/公共政策委員会委員長、人工知能学会倫理委員会副委員長。人工知能の倫理やガバナンスが研究テーマ。近著に「AI社会の歩き方-人工知能とどう付き合うか」など。専門は科学技術社会論(STS)。



現在、国内外問わずAIと倫理についての議論がものすごい勢いで進んでいます。特に欧米、東南アジア、中国などで、企業、大学、NPOなどさまざまなステークホルダーが一緒になって、今まさにAIと倫理のムーブメントを作っていこうとしているところです。



今回ABEJAからEAAのお話をいただいたのは、ちょうど私が理事を務める日本ディープラーニング協会の中で、さまざまなAI企業が独自の倫理指針ガイドラインを出していたタイミングでした。先程の岡田さんがおっしゃったようなお話を聞き、お手伝いをしたいとお引き受けしました。現在はAIと倫理の問題についてまだ「こうするのが正しい」というものが固まっていません。そんな時だからこそ、AIスタートアップの代表的企業であるABEJAという企業にしかできないことを一緒に考えていけたらと思っています。



三部裕幸委員=渥美坂井法律事務所・外国法共同事業パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。M&A・投資・証券発行、個人情報保護、IoT・AI・Fintech などの分野に携わる。総務省「AIネットワーク社会推進会議」AIガバナンス検討会等メンバー、文部科学省「Society5.0実現化研究拠点支援事業推進委員会」委員、内閣府SIP第2期「ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」学習支援技術分科会委員。



AIがこれほど社会に普及する前の法律では、現代社会でこれから生じるであろうAIに関するリスクに対応することは不可能です。今後おそらく、これまで想像だにできなかった法的問題点が出てくるでしょうし、現に出始めています。ABEJAのような革新的な企業がAIと倫理、法律に関する取り組みを深め、ステークホルダーにとっても素晴らしい体制を構築するという理念に共鳴し、このたび委員として参画することにしました。



これまで内閣府や総務省、文部科学省などのAIと倫理、法律に関する委員会に参加してさまざまな情報を得ると同時に、実際の案件を通して倫理を尊重しないことによって生じる法的リスクについても知見を深めてきました。それらを活かし、主に法律に関するリスクの検討という点でEAA委員としての役割を果たし、活動をサポートしたいと考えています。岡田さんをはじめとするABEJAのスタッフや他の外部委員の皆さんと話してみて、非常に興味深い活動ができると思っています。



西村カリン委員=フランス出身。テレビ局などの技術者を経て99年から日本在住。フリージャーナリストを経て通信社の東京特派員。2002年、移動通信技術・サービスの現状などをまとめた「La telephonie mobile」出版。2013年、フランス政府から国家功労勲章シュヴァリエ受賞。近著に 「不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人」など。



AIに関するニュースは日本に限らず、フランスでも毎日のようにメディアで取り上げられています。一般人としても無視できない話題です。これからの社会でAIがどうなるか、自分の個人情報はどう使われるのかという問題に強い関心があります。



委員のオファーをいただいた理由は、たぶん私が異文化出身で、遠慮なく反対の意見も示せるイメージがあるからだと思います。フランス人は個人情報やAIの使い方に関しても非常に敏感です。厳しい立場で議論したいと、委員を引き受けました。今回発足したEAAの委員は私以外は全員AIの専門家です。その中で、私は一般人として疑問に思ったことを率直に聞き、専門家の回答をどう受け止め、リアクションするか。それが私の役割だと思っています。



※山口周委員は当日ご欠席されました。

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